ジダン氏の次男ルカ選手 アルジェリア代表としてW杯デビュー 父が見守る前でメッシ選手にハットトリック献上も“ルーツの国”を背負った挑戦に注目

2026.6.17

2026 FIFAワールドカップ北中米大会のグループJの初戦で、

アルジェリア代表が前回王者アルゼンチン代表に0-3で敗れた。

しかし、この試合には結果以上に大きな注目を集めた存在がいた。

フランスサッカー界の伝説的選手として知られる

ジネディーヌ・ジダン氏の次男のルカ・ジダン選手(28=グラナダ)が

アルジェリア代表の守護神としてワールドカップデビューを果たしたのである。


 

父がスタンドから見守るなか、ルカ選手はフル出場。

だが相手は、ワールドカップ通算最多出場記録を更新し続けるリオネル・メッシ選手だった。

メッシ選手は前半17分、ペナルティーエリア手前から強烈な左足ミドルを突き刺すと、後半にも2得点を追加。大会最年長ハットトリックという新たな歴史を刻み、ルカ選手にとっては忘れられない苦いW杯デビュー戦となった。

それでも試合内容を見ると、ルカ選手は決して一方的に崩れたわけではない。

フェースガードを装着した状態でピッチに立ち、鋭い反応で幾度も決定機を防いだ。後半15分には至近距離からのシュートを弾くビッグセーブも披露したが、そのこぼれ球をメッシ選手に押し込まれた。

世界最高峰の舞台で、世界最高の選手を相手に戦った90分だった。

 

■ なぜフランスではなくアルジェリア代表を選んだのか

ルカ選手を語る上で避けて通れないのが、「なぜフランス代表ではなくアルジェリア代表を選択したのか」という点だ。

ルカ選手はフランス生まれで、若い頃にはフランスの世代別代表にも選出されている。父ジダン氏も1998年ワールドカップ優勝、2000年欧州選手権制覇を成し遂げたフランス代表の象徴的存在だった。

しかしジダン家のルーツはアルジェリアにある。

ジダン氏の両親はアルジェリア北部カビリー地方出身であり、フランスへ移住した移民家庭だった。ジダン氏自身もこれまで何度もアルジェリアへの愛着を語ってきたことで知られる。

そのためルカ選手にとってアルジェリア代表は「第二の選択肢」ではなく、自らのルーツを体現する存在でもあった。

近年の国際サッカー界では、フランスやベルギー、オランダなど欧州で育った選手が、家族の出身国である国の代表を選択するケースが増加している。

背景には二つの理由がある。

一つは代表入りの競争環境だ。

現在のフランス代表は世界有数のタレント集団であり、各ポジションに欧州トップクラブのスター選手が並ぶ。代表入りそのものが極めて困難な環境にある。

もう一つはアイデンティティーの問題である。

グローバル化が進む現代社会において、自身のルーツや家族の歴史を重視する選手が増えている。アルジェリア代表を選ぶことは単なる競技的判断ではなく、「自分はどこから来たのか」という問いへの答えでもある。

ルカ選手の決断も、その流れの中に位置づけることができる。

 

■ アルジェリア代表強化の象徴的存在に

アルジェリアは近年、欧州育ちのアルジェリア系選手の招集を積極的に進めている。

国内リーグだけでなく、フランス、スペイン、ベルギーなどで育成された選手たちを戦力化し、代表チームの国際競争力を高める戦略を取っている。

ジダン家という世界的なサッカー名門の血を引くルカ選手の代表入りは、その象徴的な事例だ。

今回のアルゼンチン戦では敗戦を喫したものの、ワールドカップ出場自体がアルジェリアにとっては3大会ぶりの快挙だった。

父がフランス代表の英雄として歴史に名を刻み、息子がアルジェリア代表として世界最高峰の舞台に立つ。

そこにはサッカーという競技を超えた、移民国家フランスと旧宗主国・旧植民地の歴史、そして現代社会における多様なアイデンティティーが映し出されている。

ルカ選手にとってメッシ選手のハットトリックは苦い記憶として残るだろう。しかし同時に、ジダン家の新たな歴史が刻まれた一戦だった。