中東の長引く戦争の影響 緊張が“風呂”を止める TOTO受注停止の裏にある調達リスクの連鎖
【©️TOTO】
中東イランでの戦争情勢の緊迫化が、なぜ日本の住宅設備メーカーの生産や受注にまで影響を及ぼすのか!?一見、無関係に見える両者の間には、エネルギーと化学素材を軸とした複雑な供給網が存在している。
水回り大手製造元のTOTOは、システムバスやユニットバスの新規受注を一時停止したが、その直接的な理由は製造に不可欠な「有機溶剤」の調達難だ。この有機溶剤は、石油精製の過程で得られるナフサを原料として生産される。
問題の核心は、このナフサの供給が中東地域に大きく依存している点にある。
中東は世界有数の原油供給地であり、日本を含む多くの国が同地域から原油や石油製品を輸入している。とりわけ重要なのが、ペルシャ湾と外洋を結ぶ海上交通の要衝であるホルムズ海峡だ。世界の原油輸送の相当量がこの海峡を通過しており、地域情勢が不安定化すれば、輸送の遅延や停止リスクが一気に高まる。
さらに、戦争や軍事的緊張が高まる局面では、単なる輸送リスクにとどまらない。
第一に、タンカーの航行リスク増大による保険料の急騰や航路変更が発生し、実質的な供給量が減少する。
第二に、産油国や精製施設の操業に影響が出る可能性があり、ナフサなど石油化学製品の供給自体が不安定化する。
第三に、各国企業が“先回り”して在庫確保に動くことで、需給の逼迫がさらに加速する「パニック的調達」も起こり得る。
こうした複合的な要因が重なり、結果として日本国内の化学素材メーカーや部材供給網に遅延や不足が生じる。その影響が、ユニットバスの接着工程に使われる有機溶剤といった末端の部材にまで波及し、最終製品の受注停止という形で顕在化した。
TOTOは現在、社内体制の見直しや代替調達の確保を進め、段階的な受注再開に向けた準備を進めている。既存受注分については生産・出荷を維持しているものの、供給網の安定性は依然として不透明な状況だ。
遠く離れた紛争が、住宅設備の納期や価格にまで影響する…。
今回の事例は、エネルギー依存構造とグローバル供給網の脆弱性を改めて浮き彫りにしている。企業にとっては調達先の多様化や在庫戦略の見直しが急務となる一方、消費者にとっても“世界情勢が生活に直結する時代”を強く意識させる出来事となっている。

