「エグジビット10契約」とは? NBAで生き残るための“入口”を詳しく解説 トレーニングキャンプから本契約、ツーウェイ契約、Gリーグまで

2026.9.26

NBAニュースで河村選手のクリッパーズとの契約の話から

時折登場する「エグジビット10契約」。

日本のファンにとっては、NBA選手との「契約」と聞くと、そのままシーズンをNBAでプレーできるように思えるかもしれない。

しかし、エグジビット10は、一般的な意味での「開幕ロスター入りが保証されたNBA本契約」とは少し違う。

簡単に言えば、NBAチームがトレーニングキャンプなどで選手を評価し、その後のNBA契約やツーウェイ契約、Gリーグでのプレーにつなげるために使われる契約形態だ。

現在、ロサンゼルス・クリッパーズとエグジビット10契約を結んでいる河村勇輝選手を見るうえでも、この制度を理解しておくことは非常に重要になる。


 

▪️そもそも「Exhibit 10」とは?

「Exhibit 10」は、NBAの選手契約に付けることができる特別な条項の一つ。

NBAの現行CBAでは、エグジビット10を付けた契約について、チームがレギュラーシーズン開始前に契約を解除し、その選手がチームのGリーグ傘下チームと契約して一定期間プレーした場合に、所定のボーナスを受け取れる仕組みが規定されている。

また、レギュラーシーズン開幕前であれば、チームがその契約をツーウェイ契約へ転換できる仕組みもある。

つまり、

エグジビット10
↓
トレーニングキャンプ
↓
プレシーズン
↓
NBAロスター入り/ツーウェイ契約/Gリーグ

という複数の道につながる可能性がある契約なのだ。

 

▪️「NBA本契約」と何が違うのか?

ここが最も重要なポイントになる。

エグジビット10契約を結んだからといって、その選手が自動的にNBAのレギュラーシーズンを戦うことが決まったわけではない。

NBAチームはシーズン開幕前にロスターを整理する。

その段階で選手が評価されれば、通常のNBA契約やツーウェイ契約へ進む可能性がある。

一方、開幕ロスターに入らなかった場合には、契約が解除され、Gリーグへ進むケースもある。

したがって、

「エグジビット10=NBA選手ではない」

という理解も正確ではない。

正式なNBAチームとの契約であり、トレーニングキャンプに参加してチームの評価を受ける立場だからだ。

正確には、

「NBAの開幕ロスター入りがまだ確定していない段階の契約」

と理解すると分かりやすい。

 

▪️なぜチームはエグジビット10を使うのか?

NBAチームにとって、若手選手やNBA経験の少ない選手を見極めるための重要な仕組みになる。

たとえば、ある選手がサマーリーグで活躍したとする。

しかし、NBAの公式戦で通用するかどうかは、実際にNBA選手たちと練習し、プレシーズンゲームでプレーしてみなければ分からない。

そこで、

「まずキャンプに呼んで見てみよう」

という段階でエグジビット10が活用される。

選手側にとってはNBAチームの練習環境に入り、コーチ陣やチームメートの前で自分の能力を示せる。

チーム側にとっては、開幕前に選手を評価できる。

双方にとって意味のある契約と言える。

 

▪️最大のポイントは「ツーウェイ契約」に移行できること

エグジビット10を理解するうえで、もう一つ重要なのが「ツーウェイ契約」だ。

ツーウェイ契約は、NBAチームとGリーグの両方に関わりながらプレーするための契約。

Gリーグ公式の説明では、ツーウェイ選手はNBAとGリーグを行き来することができ、NBAチームはツーウェイ契約を通常のNBA契約へ転換することもできる。

そのため、

エグジビット10
→ ツーウェイ契約
→ NBA本契約

というルートが生まれる。

もちろん全員がこのルートを進めるわけではない。

だからこそ、エグジビット10契約後のキャンプやプレシーズンが重要になる。

 

▪️Gリーグに行ったら「NBAから外れた」という意味ではない

これも日本のファンが誤解しやすい部分だ。

GリーグはNBAとは別のリーグだが、NBAの下部組織的な役割を担っている。

NBA Gリーグ自身も、GリーグをNBAの公式マイナーリーグと位置付け、選手やコーチなどをNBAへ送り出す育成・開発の場として説明している。

実際、Gリーグ経験者からNBAで活躍する選手は数多く存在する。

そのため、エグジビット10契約の選手がGリーグへ進んだ場合も、

「NBAへの道が終わった」

という意味ではない。

むしろ、Gリーグで試合経験を積みながら、NBAからのコールアップや契約変更を目指すルートが残されている。

 

▪️「60日」という数字にも意味がある

エグジビット10にはGリーグとの関係で重要な条件がある。

NBAのCBAでは、エグジビット10契約がチームによってレギュラーシーズン開始前に解除され、その後に選手がNBAチームのGリーグ傘下チームと契約してプレーする場合、一定条件を満たすことでエグジビット10ボーナスの対象となる。

その条件の一つが、原則として60日間連続してGリーグ傘下チームで在籍・サービスを提供することだ。

つまりエグジビット10は、単純に「キャンプに参加するためだけの契約」ではない。

NBAからGリーグへ進んだ場合の道筋まで契約上は、しっかりと設計されている。

 

ボーナスがあるのも特徴

エグジビット10契約には、一定の条件を満たした場合のボーナスが設定される。

現行CBAでは、2024-25シーズンの場合、ボーナス額は5000ドル以上7万7500ドル以下と規定され、その上限はサラリーキャップの増加に応じて毎年変動する。

Gリーグ公式の2026-27シーズン向け説明では、エグジビット10のボーナス額を5000ドルから8万5300ドルとしている。

ただし、このボーナスを単純に「契約金として必ずもらえる」と考えてはいけない。

Gリーグへ進んで一定条件を満たすなど、契約上の条件が必要になる。

 

▪️では、河村勇輝選手の場合はどうなるのか?

河村勇輝選手のケースで考えると、非常に分かりやすい。

現在のエグジビット10契約によって、まずクリッパーズのトレーニングキャンプ、そしてプレシーズンでプレーする機会を得る。

そこで河村選手がチームに必要な存在として評価されれば、

 

① NBAの通常契約へ

クリッパーズのNBAロスター入りにつながる。

 

② ツーウェイ契約へ

NBAとGリーグを行き来する契約へ移行する可能性がある。

 

③ Gリーグへ

NBAロスターやツーウェイ契約に入らなかった場合でも、GリーグでプレーしながらNBAへの道を続ける可能性がある。

この3つの方向を考えると、現在の河村選手の立場が理解しやすい。

 

▪️エグジビット10は「NBAへの最終契約」ではなく「評価されるための契約」

河村選手を例にすると、

エグジビット10=ゴール

ではない。

むしろ、

エグジビット10=次の契約を勝ち取るためのスタート地点

と考えると分かりやすい。

キャンプで評価される。

↓

プレシーズンでプレーする。

↓

チームがNBAロスターに残すか判断する。

↓

NBA本契約、ツーウェイ契約、Gリーグなど次の道が決まる。

この流れになる。

 

▪️なぜ河村選手にとって注目されるのか

河村選手はすでにNBAでプレーした経験を持つ。

そのため、初めてNBAを目指す選手とは状況が異なる。

NBAのスピード、フィジカル、戦術、長距離移動などを経験したうえで、再びエグジビット10から競争に入る。

つまり今回のエグジビット10契約は、

「NBAを知らない選手が初めて挑戦する」

というものではなく、

「NBAを経験した河村選手が、もう一度NBAロスターを目指して競争する」

という意味を持つ。

そして、その判断材料になるのがトレーニングキャンプとプレシーズンになる。