日本人初のUFC世界王者」へ視界良好!平良達郎選手が挑む“歴史的一戦”
「誰が真の王者か証明できる」井上尚弥選手から受けた衝撃、
そして日本MMA復権への覚悟
【©️UFC】
日本格闘技界が、再び世界の頂点へ手を伸ばそうとしている。
5月10日(日本時間)、米ニュージャージー州ニューアークのプルデンシャル・センターで開催される『UFC328』。世界最高峰MMA団体UFCのフライ級タイトルマッチで、同級3位の平良達郎選手(THE BLACKBELT JAPAN)が、王者ジョシュア・ヴァン選手に挑戦する。
この一戦は、単なる王座戦ではない。
UFC史上初となる“アジア人男性同士”によるタイトルマッチであり、さらに2000年代生まれ同士による王座戦としても史上初。平良選手が勝利すれば、日本人史上初となるUFC世界王者が誕生する。
かつてPRIDE全盛期、日本の格闘技は世界の中心にあった。しかしUFCがグローバル競争を加速させる中、日本MMAは長く“世界との差”を突きつけられてきた。
その停滞した空気を打ち破る存在として、平良選手への期待はかつてなく高まっている。
メディアデーに登場した平良選手は、穏やかな表情を崩さないまま、静かな言葉で覚悟を口にした。
「このチャンスをつかむ準備はできています」
本来、このタイトル戦は4月のマイアミ大会で行われる予定だった。しかし王者ヴァン選手の負傷により延期。ファイターにとって最も難しい“ピーク調整のやり直し”を強いられることになった。
「簡単ではなかったです。でも、チームがいつも支えてくれました」
そう振り返った平良選手は、沖縄から応援に駆けつける予定だったファンや友人たちへの申し訳なさも口にした。
「延期は彼らにとっても大変だったと思います。今度はニュージャージーまで来なければいけなくなったので」
世界最高峰を目指すアスリートでありながら、周囲への感謝を忘れない。
その人間性こそ、平良選手が支持を集める理由のひとつだろう。
一方で、試合に向ける視線は極めて鋭い。
ヴァン選手は前王者アレシャンドレ・パントージャ選手の負傷による短時間決着で王座を獲得した経緯もあり、一部では“真の王者ではない”という声も存在する。
それについて問われた平良選手は、言葉を選びながらも断言した。
「少し早すぎたとは思います。だから、この試合で誰が真の王者か証明できると思っています」
静かな口調とは対照的に、その内側には強烈な闘志が宿る。
さらに今回の試合について、平良選手は“個人の挑戦”以上の意味を感じている。
「この試合は、アジアにとってとても重要だと思います。UFCをもっと日本やアジアに広めていきたいです」
近年のUFCは、中国や中東市場への進出を急加速させている。一方、日本開催は限定的となり、“格闘技大国・日本”の存在感は薄れつつあった。
だからこそ、平良選手の王座挑戦には、日本MMA復権への期待が重なる。
本人もその責任を十分に理解している。
「自分がそういう存在にならなければいけないと思っています。ベルトを獲った後は、自分がUFCを日本に戻す存在になります」
この発言には、日本格闘技界を背負う覚悟がにじむ。
その平良選手が“世界基準”として刺激を受けた存在が、ボクシング世界スーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥選手だ。
平良選手は過去に、井上選手が所属する大橋ジムで練習を見学した経験を明かしている。
「井上尚弥選手のスパーリングを見せてもらったことがあります。練習にかける思いや集中力に圧倒されました。トップファイターから見習うことは多いと思いました」
現在、日本の格闘技界で世界的評価を確立している存在といえば、間違いなく井上選手だ。技術、精神力、海外評価――そのすべてが“世界標準”を超えている。
平良選手もまた、その背中を追いかけている。
また、同じ日本人ファイターへのリスペクトも忘れない。
6月に予定される堀口恭司選手とマネル・ケイプ選手の一戦について問われると、平良選手は即答した。
「堀口選手に勝ってほしいです。堀口選手が勝つと思います」
さらに、将来的な初防衛戦の相手としては、前王者パントージャ選手の名前を挙げた。
日本MMAはこれまで、宇野薫選手、岡見勇信選手、堀口恭司選手ら、多くの実力者が世界に挑んできた。しかし、“UFC世界王者”という壁だけは、最後まで破れなかった。
平良選手が挑むのは、その歴史そのものだ。
しかも彼は、かつての格闘技ブーム時代のスター像とは異なる。
過剰な自己演出も、激しいトラッシュトークもない。
ただ静かに、自らの強さを積み上げてきた。
それは、SNS時代を生きる現代アスリートらしい姿とも言える。
【文:高須基一朗】

