元世界王者が「ほぼ完勝」から一転のKO負け―全ラウンドを支配していたはずの試合で、何が起きたのか

2026.2.4

ボクシングにおいて「判定目前からの逆転KO」は決して珍しい出来事ではない。

しかし、ここまで一方的に試合を支配していた選手が、

たった数十秒ですべてを失う光景はそう多くない。

2月2日(日本時間3日)、米ラスベガスで行われた

『Zuffa Boxing 2』ライトヘビー級10回戦。

元WBC世界同級王者オレクサンドル・グボジク(38=ウクライナ)は、明らかに勝利へと向かっていた。だが、その流れは7ラウンドに突如として断ち切られる。


 

対戦相手はセルビアのラディボジェ・カラジッチ(34)。

オッズでは明確なアンダードッグ。事前の評価でも、世界再挑戦を狙うグボジクの「通過点」と見る向きが大勢だった。

実際、試合内容もその見立てを裏切らなかった。
1回には右ストレートでダウンを奪い、4回にはボディショットで再びロープに沈める。スピード、距離感、試合運び。いずれも元王者が完全に上回っていた。

6回終了時点の採点は、1人のジャッジが1ラウンドをカラジッチにつけただけで、ほぼフルマーク。勝敗はもはや時間の問題―そう思われていた。

 

しかし7回、状況は一変する。
コーナーから「右を打て」と送り出されたカラジッチが、初めて明確に踏み込んだ右ストレートをヒットさせる。グボジクの動きが止まり、続く追撃の右でダウン。立ち上がったものの、さらに右を浴びると、体が宙を舞うようにマットで一回転した。

リング中央からコーナーまで後退するほどのダメージを見たレフェリーは、

2分47秒で試合を止めた。

SNSでは「WHAT JUST HAPPENED(何が起きた)」という公式投稿が拡散され、「60―52から負けるなんて」「これがボクシングだ」と衝撃と困惑の声が相次いだ。

この敗戦は、単なる“油断”では片付けられない。
38歳という年齢、世界王座から遠ざかって以降のキャリア、そして「勝ちに行く試合」で見せた一瞬の隙。世界再挑戦を現実的な目標としていたグボジクにとって、このKO負けがもたらすダメージは計り知れない。

一方のカラジッチは、2度の世界挑戦失敗を経て、なお諦めなかった。

「自分を信じろ。ジャブの後に右を打てと言われ、その通りにした」。

その言葉どおり、たった一発がボクシング・キャリアをバズらせる結果を残した。