ミラノ冬季五輪スノーボード=人類は、どこまで回れるのか!? “横回転6回転半”という禁断領域へ

2026.2.6

─ミラノ五輪・男子ビッグエアで起きている静かな革命

(=AP)

スノーボード男子ビッグエアの会場に、これまでとは質の異なる緊張感が漂っている。
それは単なるメダル争いではない。
今、現場を支配しているのは、もっと根源的な問いだ。

「人間は、まだ限界を更新できるのか」

その象徴として、関係者の間でささやかれ始めた言葉がある。
「横回転6回転半」。
成功すれば歴史。失敗すれば、重大なリスクと紙一重。
その“前代未聞”の領域に、日本の若きライダーたちが、もはや夢物語ではなく現実的な選択肢として足を踏み入れようとしている。


 

▪️日本代表4人全員が決勝へ・・・だが、本当の異変は「順位」ではない

ミラノ・コルティナオリンピック™、スノーボード男子ビッグエア予選(日本時間6日、リビーニョ・スノーパーク)。
結果だけを見れば、日本勢の強さは明白だった。

 

荻原大翔(20/TOKIOインカラミ)…首位

木村葵来(21/ムラサキスポーツ)…3位

長谷川帝勝(20/TOKIOインカラミ)…5位

木俣椋真(23/YAMAZEN)…10位

 

出場した4人全員が決勝進出。
だが、世界が本当にざわついている理由は、順位ではない。

注目されているのは、「彼らが何を、どこまでやろうとしているのか」という点だ。

今大会の予選では、30人中12人が通過。

そのうち約8割が、横回転1800度(5回転)以上を成功させた。
これは、4年前であれば表彰台を狙える難度だった技だ。
わずか4年で、ビッグエアの“最低ライン”は一段、いや二段引き上げられた。

進化のスピードは、もはや異常値に近い。

 

▪️荻原大翔選手、淡々と首位通過─視線の先にある“次のカード”

首位通過を果たした荻原大翔は、1本目から90.50点をマーク。
2本目でも5回転の高難度技を成功させ、合計178.50点で他を圧倒した。

だが、本人の言葉は驚くほど落ち着いていた。
「自分がやりたいと決めていた技を、1、2回目で出せてよかったです」

初出場の五輪。それでも「最近は大会であまり緊張しなくなった」と語る20歳。
関係者の視線は、すでに決勝で繰り出されるかもしれない“次の一手”に向いている。

それが、「横回転6回転半」だ。

 

▪️「6回転半」が意味するもの・・・回転数以上の壁

この数字は、単なる回転数の話ではない。
ジャンプの高さ、滞空時間、空中での姿勢制御、そして着地精度。
すべてが極限値に達して、初めて成立する領域だ。

2018年平昌大会から正式種目となったビッグエア。
日本勢の五輪最高成績は、北京大会での4位。
つまり、この競技で日本はまだ、五輪の表彰台に立っていない。

それでも今回、会場の空気は明らかに違う。
議論の軸が、「勝てるかどうか」から
「どこまで踏み込むのか」へと移りつつある

 

▪️近く若者たちの言葉が映す、時代の変化

近年、スノーボード業界にとどまらず、サッカーや野球、バスケットボールと球技スポーツでも世界のトップを直走る日本人選手が当たり前に登場している状況を目の当たりにしている日の丸を背負う代表選手たち。

決勝を前にした日本人選手たちの言葉は、その変化をはっきりと物語っている。

荻原はこう言った。
「自分のやりたいことを決めて、優勝できたらいいなと思います」

3位通過の木村葵来は、さらに踏み込む。
「やるべきことを淡々とやるだけ。僕の滑りをちゃんと見てほしい。金メダル、取ります」

5位の長谷川帝勝は、予選で転倒しながらも立て直し、「余計なことは考えない」と語った。
10位の木俣椋真も、「応援してくれている人に、メダルを見せたい」と覚悟をにじませる。

共通しているのは、過剰な気負いがないことだ。
彼らにとって高難度は、もはや“賭け”ではない。
戦略としての選択肢になっている。

 

▪️歴史か、危険か!?境界線の上で

空中で横に6回転半。
成功すれば競技の常識を書き換え、失敗すれば一瞬で代償を伴う挑戦だ。

“スピンマスター”の異名を持つ荻原選手は、大会前にこう宣言している。
「決勝で2340(ギネス世界記録)を出して優勝したい。次は7回転を、世界で初めて決めたい」

若さゆえの無謀さか。
それとも、技術と環境が追いついた必然か。

男子ビッグエア決勝は、日本時間8日。
日本勢は、“前代未聞”を想像の世界から、現実へと引きずり出してしまうのか―。