『閃光のハサウェイ』新作が示した「ガンダム映画」の異変─5日で10億円超、その裏で起きていること
【© 創通・サンライズ】
『ガンダム』の新作映画が好調だ、という話だけで終わらせてしまうには、
今回の数字はあまりに示唆的だ。
1月30日に公開された『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ キルケーの魔女』は、公開5日間で興行収入10億円超、観客動員60万人を突破した。2021年公開の前作『閃光のハサウェイ』が最終的に22.3億円を記録したことを踏まえれば、「すでに半分に到達」というペースは異例と言っていい。
だが、本作のヒットが注目される理由は、単に“数字がいい”からではない。
▪️なぜ「ハサウェイ」なのか!?
近年の『ガンダム』映画は、ヒットの軸が比較的明確だった。2024年公開の『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』は、20年以上にわたるファン層の蓄積と、分かりやすいカタルシスを前面に押し出した王道の成功例だった。
一方、『閃光のハサウェイ』はどうか。
扱っているのは、反地球連邦政府運動「マフティー」という過激思想、テロ行為、そして主人公ハサウェイ・ノアの矛盾と葛藤である。決して“間口の広い物語”とは言えない。
それにもかかわらず、本作はIMAXを含む431スクリーンという大規模公開で初動から観客を集め、前作比162%という数字を叩き出した。これは「ガンダム=分かりやすい娯楽」という従来の図式が、静かに崩れつつあることを示している。
▪️「重さ」を選ぶ観客が増えている
『キルケーの魔女』で描かれるのは、派手な戦争ドラマではない。
少女ギギ・アンダルシアの言葉に揺さぶられ、過去のトラウマと向き合いながら、なお“マフティーとして生きる”ことを選び続けるハサウェイの内面だ。
言い換えれば、本作はガンダムでありながら、観客に「共感」よりも「不快さ」や「違和感」を突きつける作品でもある。にもかかわらず、観客動員は伸びている。
これは、アニメ映画の観客層が成熟し、「分かりやすさ」よりも「考えさせられる物語」を選び始めている兆候とも読める。
▪️シリーズ最高記録は更新できるのか!?
現時点では、シリーズ最高興収50億円を記録した『SEED FREEDOM』のペースには及ばない。だが、『閃光のハサウェイ』は三部作構成であり、今回の『キルケーの魔女』はその2作目だ。
物語が進むほど重層化し、ハサウェイという人物の選択がより鮮明になる構造上、単なる“続編消費”で終わらない可能性もある。むしろ、このシリーズは「数字以上に語られるガンダム」になることを目指しているようにも見える。
▪️ガンダムはどこへ向かうのか・・・
2019年の40周年、そして「UC NexT 0100」という大きな節目を経て、『ガンダム』は今、エンタメと思想の間で再び揺れている。
『キルケーの魔女』のヒットは、その揺れを観客が受け止め始めた証拠なのか。
それとも、一時的な熱狂に過ぎないのか。
少なくとも言えるのは、今回の成功が「次のガンダム映画はどうあるべきか」という問いを、制作側にも観客側にも突きつけた、という事実だろう。


