Krush183ー徹底した準備と戦略が導いた戴冠―齋藤紘也選手が作戦遂行で新ウェルター級王者に

2025.12.19

【©️K-1】

12月19日、東京・後楽園ホールで開催された「Krush.183」。
ダブルメインイベント第1試合として行われた第11代Krushウェルター級王座決定トーナメント決勝戦は、力と勢いではなく、事前に練り上げられた戦略を最後まで貫いた者が勝者となる一戦となった。

王座に就いたのは齋藤紘也選手。
フルコンタクト空手をバックボーンに持つ大石昌輝選手を相手に、派手な攻防に付き合うことなく、相手の長所を封じ込める戦いを3ラウンドにわたって遂行。

判定3-0のフルマークで、新ウェルター級王者に輝いた。


 

試合開始から齋藤の狙いは明確だった。
距離を保って蹴りを繰り出したい大石に対し、齋藤は自ら間合いを潰し、頭を付けるほどの超接近戦へと持ち込む。1R、左右の連打とショートアッパーを軸に前進を止めず、大石に内廻し蹴りやカーフといった大技を打たせる余地を与えない。

2Rに入っても戦略は揺るがない。
迎え撃つ大石の右フックを受け止めながらも、すぐに組みの展開へ移行。ロープ際でショートアッパーとヒザを細かく積み重ね、試合を停滞させながらも確実に主導権を握り続ける。距離が開く場面を作らせず、相手のリズムを奪うことに集中したラウンドとなった。

最終3R、齋藤はさらに圧力を強める。
左右の連打とヒザ蹴りで押し込み、大石をロープ際に釘付けに。もみ合いの中でも手数を止めず、ポイントを着実に積み上げていく。最後まで試合の構図は変わらず、齋藤が描いた展開のままゴングを迎えた。

 

結果は判定3-0。
相手の強みを消し、自分の土俵に引き込むための準備と判断力が、

そのまま勝敗に直結した一戦だった。

試合後、齋藤はマイクを握り、静かに胸の内を語った。
「変な試合してしまってすいません。今年2月から移籍して、代表と“今年中にベルトを獲る”って約束していました。練習がない日も自分を鼓舞して、今日までベルトを獲る気持ちでやってきました」

華やかなKOではない。
だが、約束を果たすために積み重ねてきた準備と戦略を、リング上で一切ブレずに実行し切った王者の姿が、そこにはあった。