“選手層の厚さ”が生む日本ボクシングの群像劇 堤聖也選手が古豪ドネア撃破で次は井岡一翔戦へ照準
【堤聖也選手・公式インスタグラムより画像】
ボクシングのトリプル世界戦が17日、東京・両国国技館で行われ、WBA世界バンタム級の団体内王座統一戦で正規王者の堤聖也選手(29=角海老宝石)が暫定王者ノニト・ドネア(43=フィリピン)を2―1の判定で破り、2度目の防衛に成功した。
世界5階級制覇のスーパースターを相手に競り勝った一戦は、日本勢の選手層の厚さとストーリー性を改めて印象づけるものとなった。
井上尚弥選手や中谷潤人選手といった絶対的な日本人選手のスターが世界を席巻する一方で、その背後では次々と“主役候補”が台頭している。
堤選手もその一人だ。
倒し倒されの激闘をくぐり抜けてきた29歳は、この日も修羅場慣れしたファイトを披露。序盤は衰えを感じさせないドネアの強打と圧力に苦しめられ、4回には右の強打をカウンターで受けてダウン寸前に追い込まれた。
しかし、後半に入ると持ち前の粘り強さで主導権を取り返して、後半戦は相手にポイントを許さない展開を続ける。
僅差ながら判定勝利をものにした。
試合後、インタビュー会見で、堤選手の鼻は「折れてますね」と言われるほどに腫れ上がっていた。それでも「ギリギリでした。ドネア選手、強かったです」と激闘を素直に認めたうえで、「スーパーフライ級から、レジェンドがバンタム級に上げている」と次なる挑戦を示唆。
名前こそ出さなかったが、視線の先にあるのは
世界4階級制覇王者・井岡一翔選手(志成)だ。
解説として会場を訪れていた元WBA世界スーパーフェザー級王者の内山高志氏は、
36歳まで王座を保持した自身の経験を踏まえ、
「驚異的ですよ。ダウンは取れなかったけど、何度倒れてもおかしくないパンチを打っていた。さすがレジェンド」とドネアの底力を称賛。
その上で「それでも堤の頑張りが効いた」と若き王者の勝利を高く評価した。
さらに、堤選手が井岡選手との対戦を見据える流れに「可能性はありますから。“レジェンド狩り”ですよ。面白くなりそうですね」と期待を込めた。
スター同士のビッグマッチだけでなく、世代交代のうねりとベテランの意地が交錯する―そこに今の日本ボクシングの醍醐味がある。
堤自身も「みんなが『行けよ』と思う時間があったと思うけど、行かせてもらえなかった。ベテランのうまさ、経験の差を感じた。いい経験になりました」と収穫を口にした。

