【BreakingDown】計量前ビンタで昏倒、翌日にくも膜下出血判明―安全最優先の判断が示した“次のステージ”への課題
2025年12月14日、さいたまスーパーアリーナ・コミュニティアリーナで開催された『BreakingDown 18』で、競技の安全性を改めて見つめ直す出来事が起きた。
第5試合ライト級ワンマッチ(キックルール・70キロ以下)に出場予定だった竜選手が、前日公開計量の場で対戦相手・選手から平手打ちを受けて昏倒。
後方に倒れた際に後頭部を強打し、一時的に意識を失い、
痙攣の症状も確認されたことから医療スタッフの判断により試合は中止となった。
大会当日、竜選手はケージに立ち、「油断があった」と自らを省みながらも、再戦への強い思いを語った。その姿は、勝敗以上に競技に向き合う覚悟を感じさせるものだった。
その後、大会翌日に竜選手はSNSを通じ、くも膜下出血が判明したことを報告。当初のCT検査では大きな異常は見つからなかったものの、飛行機移動後に体調が悪化し、再検査によって診断が下されたという。現在は医師の管理のもとで治療を受け、症状は安定し、回復に向かっていることが伝えられている。
頭部外傷に起因する”くも膜下出血”は、格闘技を続ける者にとって極めて慎重な判断が求められる症例だ。
その中で、試合を中止し、選手の安全を最優先した今回の対応は、大会として成熟へ向かう重要な判断だったとも言える。
竜選手は、2026年3月に開催予定の『BreakingDown 19』での復帰と江口選手との対戦に意欲を示しているが、今後は医師の判断を最優先に、万全の体制で判断が進められることが望まれる。
今回の出来事を通じて注目されたのが、公開計量という公式イベントにおける安全管理の在り方だ。米国のパワースラップ競技では、事前に構えを取り、複数のレフェリーが転倒防止に入るなど、リスクを想定した体制が整えられている。BreakingDownにおいても、こうした事例を参考にしながら、より実効性のある安全対策が検討される余地があるだろう。
朝倉未来CEOも大会後、「暗黙の了解を超えた行為だった」とコメントしており、今回の経験を今後のルール整備や運営体制の見直しに生かしていく姿勢がうかがえる。
法的観点においても、競技外での接触や行為には慎重な線引きが求められる。
だからこそ、明確なガイドラインやペナルティー規定を整備することは、選手を守ると同時に、イベントの信頼性を高めることにもつながる。
BreakingDownは、独自の熱量と話題性で格闘技界に新たな風を吹き込んできたイベントだ。今回の出来事を一過性のトラブルで終わらせるのではなく、安全対策の強化と競技環境のアップデートへとつなげていくことで、より多くの支持を集める大会へと進化していくはずだ。
選手の覚悟と同時に、運営の責任と工夫が重なった先にこそ、
BreakingDownの“次のステージ”がある。
【文:高須基一朗】

