体重超過のフルトン巡る“前例なき判断”WBCが下した柔軟対応の背景とは
かつて井上尚弥選手との激闘で名を馳せたスティーブン・フルトンが、
またしても全米で大きな注目を集めている。
もっとも今回は試合内容ではなく、計量をめぐる“異例の判断”だ。
■ 計量失敗から一転…ライト級暫定王座戦へ
現地時間12月5日に行われたWBC世界スーパーフェザー級タイトルマッチ前日計量で、フルトンが規定の130ポンドを2ポンド超過し計量に失敗。
通常であれば王座挑戦権を失い、試合の扱いそのものが複雑化するケースだ。
しかし今回は、WBCが即座に試合を「世界ライト級暫定王座決定戦」へと組み替え、カードを“存続”させるという異例の措置を取った。
試合実施を強く望んだ両陣営の意向を踏まえ、階級を変更することで興行としての成立を優先した形だ。
■ フォスター陣営も応じた“興行維持”の判断
王者フォスターは規定体重をクリアしており、本来は不利を被る側。
しかしそれでも試合を受け入れた背景には、タイトル防衛に代わる価値、そして観客にボクシング・ファンの期待に応えたいという意図が透けて見える。
フルトン側が体重超過を謝罪し、条件面を大幅に譲歩したことも、
双方の合意につながったとみられる。
■ 米国メディアは困惑も、制度議論が前に進む契機に
米記者からは「前例が少ない」として驚きの声も上がった。
とはいえ、フルトンの計量失敗を契機に、競技としての柔軟性やエンターテインメント性の両立をどう図るかという議論が改めて注目されている。
長きにわたり、多階級制と厳格な計量ルールを抱えるボクシング界では、体重超過が試合中止につながるケースも少なくない。それゆえ今回のような迅速な“階級スライド”は、今後のルール運用を考える試金石となる可能性がある。
■ 今後の焦点は「再発防止」と「制度の明確化」
今回の一件は、批判と同時に“改善の余地”を可視化したともいえる。
問われるのはフルトン個人の失態だけでなく、ボクシングという競技が、選手の健康管理・興行維持・公平性の三つをどう両立させるのかという永遠のテーマだ。
WBCが下した判断は確かに異例だった。
だがその裏には、混乱の中でも試合を成立させ、
ボクシングファンの期待に応えようとする関係者の現実的な判断があった。

