電通一強時代の終焉か!? FIFAが博報堂と交渉開始

2025.4.23

──ついに「電通外し」が本格化、その背後にある構造腐敗と国際的な“不信感”

サッカー日本代表が8大会連続のW杯出場を決めたその裏で、日本のメディア業界における「異変」が静かに、しかし確実に進行している。

それは、FIFA(国際サッカー連盟)が2026年に北中米で開催される「FIFAワールドカップ2026」の日本国内の放映権について、これまで長年にわたり独占的に取り仕切ってきた電通を外し、ライバルの博報堂と交渉を進めているという動きだ。

 

▪️電通が排除された放映権ワークショップ

FIFAが主催する放映権ビジネスのワークショップが2024年3月、米ダラスで開催された。関係者によると、ここに招かれたのはNHKと博報堂のみ。長年、W杯の放映権を国内で取り扱ってきた電通は招待されなかったどころか、「FIFAが電通からの参加要請を断った」(広告代理店関係者)という衝撃の事実が明らかになった。

この事態は、単なる交渉先の変更にとどまらない。電通という企業が抱える過去と現在、そしてFIFAや国際社会からの信頼失墜が色濃く影を落としているのだ。

 

▪️長年の“利権構造”にメスが入る

これまで電通は、FIFAから放映権を一括で買い取り、国内テレビ局への販売・広告枠の設定・競技場での撮影ポジションの割り振りなど、あらゆる面で中間業者として君臨してきた。いわば、日本のメディア界における“絶対権力者”だった。

しかし、FIFA関係者は語る。「現場でのロジには多少の経験が要るが、放映権ビジネス自体に特別な技術やノウハウは不要」。つまり、電通が担ってきた業務は“代替可能”であり、“必要不可欠”ではなかったということだ。

 

▪️電通とFIFAの蜜月関係、崩壊の序章

電通とFIFAの関係を象徴するのが、1998年から約17年間会長を務めたゼップ・ブラッター氏との関係。そして、その裏で日本側のキーマンとして動いていたのが、2022年に東京五輪を巡る収賄容疑で逮捕された高橋治之元専務だ。

FIFAでは2015年にブラッター会長が汚職スキャンダルにより事実上解任され、組織内の粛清が始まった。一方の電通も2022年以降、東京五輪をめぐる一連の談合・不正契約が次々と暴かれ、社内外からの批判が噴出した。

今回の「電通外し」は、こうした過去の構造腐敗に対する国際的な“制裁”である可能性が高い。

 

▪️FIFAのコメントに見る方向転換の意思

FIFAは東洋経済の取材に対し、ワークショップに博報堂とNHKが参加したことを認めたうえで、「2026年大会に向け、FIFAはデジタル活用と革新を非常に重視する。テクノロジーとビデオ消費の進化に適応していく」とコメント。これは、時代遅れの手法と不透明な商慣習から脱却する意思の表れと受け取れる。

日本国内ではいまだに電通が圧倒的な広告シェアを誇るが、国際的な視点から見れば、それは“ガラパゴス的独占”にすぎない。FIFAが本気で電通を外しにかかったという今回の動きは、日本のメディア業界に対して強烈な警鐘を鳴らしている。