NBAカップ制覇も「掲げぬ誇り」ニックスがMSGに優勝バナーを掲出せず
“バナーの歴史”に静かな区切り 真の目標はリーグ制覇
【©️New York Knicks 】
ニューヨーク・ニックスが、新時代のタイトルを手にしながらも、
その栄誉を“天井に掲げない”という異例の決断を下した。
12月17日(現地時間16日)、ネバダ州ラスベガスのTモバイル・アリーナで行われた「エミレーツNBAカップ2025」(旧インシーズン・トーナメント)決勝で、ニックスはサンアントニオ・スパーズを124―113で撃破。大会史上3代目の王者に輝いた。
試合では、前半だけで20得点を奪ったOG・アヌノビーがゲームハイの28得点を記録。大会MVPに選出されたジェイレン・ブランソンも25得点8アシストと司令塔の役割を果たした。さらにカール・アンソニー・タウンズが16得点11アシスト、ジョシュ・ハートやミケル・ブリッジズらも攻守で存在感を示し、チームとして完成度の高さを印象づけた。
もっとも、優勝の余韻が残る中で伝えられたのが、「バナーは掲出しない」という決断だった。翌18日、米スポーツ専門局『ESPN』が、ニックスが本拠地マディソン・スクエア・ガーデン(MSG)にNBAカップ優勝バナーを掲げない方針を固めたと報道。
マイク・ブラウン・ヘッドコーチは当初、掲出の可能性を示唆していたが、
優勝直後にクラブとして最終判断が下されたという。
NBAカップを巡る“バナー文化”はまだ始まったばかりだ。
初代王者のロサンゼルス・レイカーズ、
2代目のミルウォーキー・バックスはいずれもホームアリーナに優勝バナーを掲出。
新設タイトルながら、歴史の一部として刻む姿勢を示してきた。
一方でニックスは、伝統の重みを別の形で受け止めた。
フランチャイズ最後のNBA制覇は1972―73シーズン。
1998―99シーズンのイースタン・カンファレンス優勝以降、MSGの天井に新たなバナーは加えられていない。
栄光の歴史を持つがゆえに、「何を掲げ、何を掲げないか」に慎重なクラブでもある。
さらに、レイカーズとバックスはいずれもNBAカップ制覇のシーズンにプレーオフ1回戦敗退という結果に終わっている。
昨季、2000年以来となるカンファレンス・ファイナル進出を果たし、今季は本気でリーグ制覇を狙うニックスにとって、カップ戦の称号は“通過点”に過ぎないという判断が透けて見える。
ブランソンも優勝直後、「パレードをするつもりはない。この瞬間は楽しむが、明日になれば前に進む」と語った。
祝福よりも、次を見据える姿勢。
その象徴が、バナー掲出を見送る決断だった。
NBAカップという新たな歴史が積み重なる一方で、ニックスはあえてその流れに距離を置いた。MSGの天井に掲げられる次のバナーは、あくまで“真の王者”の証―リーグ制覇の時だと、クラブは静かに宣言したのかもしれない。


