RISE 那須川龍心選手、ISKA世界王座を獲得も…兄・天心の「完全勝利の系譜」に届かず「空回りだった」
【©️RISE】
6月21日、横浜BUNTAIで開催された「RISE WORLD SERIES 2025」にて、那須川龍心(19)がISKA K-1ルール世界ストロー級(51.5kg)王座を奪取。
強敵ハマダ・アズマニ(モロッコ)を3-0の判定で下した。
だが、会場を包んだ拍手とは裏腹に、
マイクを握った龍心の顔には笑顔がなかった。
「KOしてやろうって気持ちが強くて、空回りしてしまって……。スカッと勝って、53キロのランカーに宣戦布告したかったんですが、この内容じゃまだまだです。一からやり直して、強くなって帰ってきます」
その言葉に、観客の中にはかつての記憶を重ねた者も少なくなかっただろう。
かつて“キック界の神童”として君臨した兄・那須川天心は、RISE時代を中心に42戦無敗、28KOという圧倒的な戦績を誇り、試合のたびに異次元の強さを見せつけてきた。そのKO劇には「那須川に判定勝ちはない」という幻想すら漂っていた。
一方、龍心はその「那須川ブランド」の継承者として注目を集めつつも、兄のような“絶対的勝利”とはまだ距離がある。1Rからボディ、フック、ストレートで攻勢に出て主導権は握ったが、試合を決定づける一撃には至らず、フルラウンドを戦い抜いた末の判定勝ちに。
内容は完勝であっても、「天心の再来」を期待する声には応えきれなかった。
蝶野正洋アンバサダーから「日本を代表して頑張ってください」と激励を受けても、
龍心は浮かない表情のまま。
だが、それは彼が「結果」に安住せず、未来を見据えている証でもある。
「次の大会からは階級を上げます。51.5キロのベルトは返上して、53キロで挑戦します。上位ランカーに勝てるよう、必死に練習してまた戻ってきます」
兄・天心がそうであったように、敗北を知らない若武者にも“自らを追い込む覚悟”がある。タイトルを獲った夜に自ら反省の言葉を口にし、より高みを目指す—。
それこそが那須川家に流れる本当の「格闘DNA」なのだろう。
【文:高須基一朗】