刑務所内での暴力の実態浮き彫りに――ラッパー、トリー・レーンズ受刑者が14回刺され重傷
刑務所内での暴力の実態浮き彫りに―
ラッパー、トリー・レーンズ受刑者が14回刺され重傷
©️Tory Lanez
アメリカの刑務所内における暴力の実態が再び注目を集めている。米カリフォルニア州にある州立刑務所で、カナダ出身の人気ラップ歌手、トリー・レーンズ(本名:デイスター・ピーターソン)受刑者が襲撃され、刃物で14回刺されるという事件が発生した。本人は命に別条はなく、現在は回復傾向にあると報じられている。
▪️刑務所内での襲撃
事件が起きたのは、同州テハチャピにあるカリフォルニア州矯正施設。地元当局およびカリフォルニア矯正局によると、襲撃は5月12日午前7時20分頃、施設内の居住ブロックで発生した。襲撃後、施設の職員は迅速に応急処置を施し、レーンズ受刑者は外部の病院に緊急搬送された。
本人のSNSとみられる投稿によれば、背中に7カ所、胴に4カ所、後頭部に2カ所、顔面に1カ所と、計14カ所を刺されたという。さらに、両肺を損傷し、一時は人工呼吸器の使用を余儀なくされたが、現在は自力での呼吸が可能となっている。
▪️矯正施設の安全性が問われる
今回の事件は、米国の刑務所における受刑者間暴力の深刻さを改めて浮き彫りにした。米国の刑務所では、ギャング抗争、民族的対立、個人間のトラブルなどが暴力事件の温床となっており、特に有名人や著名な事件で収監された受刑者は標的になりやすいとされる。
レーンズ受刑者は、2020年7月に米ラッパー、ミーガン・ジー・スタリオンを銃撃した罪で、2023年に禁錮10年の判決を受け服役中だった。裁判では、車中での口論後にスタリオン氏が車を降りた直後、彼の足を銃で撃ったとされ、有罪判決が確定している。本人および弁護士は無罪を主張していたが、再審請求は却下された。
▪️今後の捜査と課題
現在、刑務所の捜査部門および地元の検察が事件の詳細を調査している。凶器の入手経路、襲撃の動機、共犯の有無などが焦点となっている。
今回の事件は、アメリカの刑務所が抱える構造的な問題、特に暴力の蔓延と再犯防止に向けた環境整備の遅れを浮き彫りにした。専門家の間では、収監中の安全確保と受刑者の人権保護に向けた改革が急務との声も上がっている。