ジェームズ・スペイダーがウルトロン役で再び脚光 米国ドラマ『ブラックリスト』10シーズン218話を支えた唯一無二の存在感
Disney+のマーベルドラマ『ビジョンクエスト』で、ジェームズ・スペイダーがウルトロン役として再び注目を集めている。2015年公開の映画『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』以来となるマーベル作品への復帰で、長年のファンにとっても待望の展開だ。
スペイダーといえば、映画ファンにはウルトロン、海外ドラマファンには『ブラックリスト』のレイモンド・“レッド”・レディントンとして知られる俳優だ。
とりわけ『ブラックリスト』は、米NBCで2013年から2023年まで10シーズンにわたって放送され、全218話という規模に到達した。米国のテレビドラマ市場で長期シリーズが成立する難しさを考えると、主演俳優として作品を支え続けたスペイダーの存在感は大きい。
今回のウルトロン復帰をきっかけに、改めて振り返りたいのが、悪役から謎めいた犯罪者まで自在に演じ分けてきたスペイダーのキャリアと、『ブラックリスト』が長年にわたって視聴者を引き付けた理由だ。
▪️Disney+『ビジョンクエスト』でウルトロンが復活
『ビジョンクエスト』は、ポール・ベタニー演じるヴィジョンを中心に描くマーベル・テレビジョンのドラマシリーズ。『ワンダヴィジョン』『アガサ・オール・アロング』に続く物語として展開され、ヴィジョンが自らの記憶や存在意義と向き合うなかで、人工知能ウルトロンも重要な役割を担う。
ウルトロンは、人類を守るという目的から人類そのものを脅威と判断するに至った人工知能だ。映画『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』では、地球規模の危機を引き起こす存在として描かれた。
そのウルトロンに声と独特の存在感を与えたのがスペイダーだった。冷静で知的な語り口、相手の心理を見透かすような間の取り方、そして余裕を感じさせる話し方。単に恐ろしいだけではない、知性と皮肉を併せ持つキャラクターに仕上げた。
『ビジョンクエスト』で注目されるのは、ウルトロンが単なる過去の敵として登場するのではなく、ヴィジョンの内面や記憶に関わる存在として描かれる点だ。機械として生み出された存在が、自らの目的や人間との関係を問い直すというテーマは、ウルトロンとヴィジョンの関係性にも深く結び付いている。
映画から約11年を経て再び同役に戻ったスペイダー。長年の歳月を経たキャラクターがどのような姿で描かれるのかは、シリーズの大きな見どころとなっている。
▪️米国で10年間続いた『ブラックリスト』の異例のスケール
スペイダーの代表作を語るうえで欠かせないのが、犯罪サスペンスドラマ『ブラックリスト』だ。
2013年9月に米NBCで放送が始まった同作は、国際的な犯罪者レイモンド・レディントンがFBIに自ら出頭するところから物語が動き出す。世界各地の危険人物に関する情報を持つレディントンは、FBIへの協力を申し出る一方、特定の捜査官としか話さないという条件を提示する。
犯罪者でありながら捜査に協力する。敵なのか、味方なのか。その立場さえ簡単には見極められないレディントンの存在が、物語の中心となった。
放送開始直後から視聴者の関心を集め、NBCは第1シーズンを当初の予定から拡大し、全22話の制作を決定。制作元のソニー・ピクチャーズ・テレビジョンは2013年10月、米国での好調な視聴状況を発表した。初回放送後の録画視聴も大きく、放送後3日間の視聴者数を加えた数字では、初回の視聴者数の97%を第2話でも維持したと報告された。
新作ドラマが放送開始直後に注目を集めることと、その人気を何年も維持することは別の問題だ。『ブラックリスト』は、その両方を乗り越え、最終的に10シーズン218話という長期シリーズになった。
最終シーズンは2023年に放送され、約10年にわたる物語に幕を下ろした。
▪️1シーズン22話という米国ドラマの制作規模
『ブラックリスト』を語る際に注目したいのが、1シーズン当たりのエピソード数だ。
日本の連続ドラマでは、1クール10話前後の作品が一般的だが、米国の地上波ネットワークで放送されるドラマでは、1シーズン20話以上を制作する形式が長く採用されてきた。『ブラックリスト』も初期シーズンでは22話を基本とし、毎週の放送を通じて物語を積み重ねていった。
ただし、全10シーズンがすべて22話だったわけではない。
season8までは、22話となっている。
これも人気FBI捜査官のキャラクター俳優がシーズン8で作品の物語上で、
ここで出演が終わったことで
シーズンフィナーレまでに回数が減った経緯がある。
シーズンによって話数は異なり、シリーズ全体では218話となっている。
この規模を日本の連続ドラマの感覚に置き換えると、その長さがより分かりやすい。仮に1クール10話の作品に換算すれば、約22クール分に相当する。単純計算で約22本の連続ドラマを作るのに近い話数を、同じ主人公を中心とする一つのシリーズで描いたことになる。
もちろん、米国ドラマと日本のドラマでは制作体制も放送事情も異なるため、単純な比較はできない。それでも、毎シーズンにわたって脚本、演出、出演者のスケジュールを維持し、視聴者を引き付ける物語を提供し続けることが、容易ではないのは確かだ。
『ブラックリスト』の長期放送は、作品の企画力だけでなく、主人公レディントンを演じるスペイダーの存在がシリーズの核として機能していたことを示している。
▪️レイモンド・レディントンという強烈なキャラクター
『ブラックリスト』の魅力は、犯罪捜査を扱うサスペンスとしての面白さだけではない。
レディントンは、FBIが追い続けてきた危険な犯罪者でありながら、捜査に必要な情報を提供する協力者でもある。彼は犯罪者たちの弱点や秘密を熟知し、捜査チームを助ける一方、自身の過去や真意については多くを語らない。
スペイダーは、この複雑な人物を大げさなアクションに頼らず、会話と表情、声の抑揚によって表現した。
相手を圧倒するような長いせりふ、何気ない冗談の裏に潜む威圧感、そして一瞬だけ見せる人間的な感情。レディントンは、冷酷な犯罪者でありながら、時にユーモラスで、時に情に厚い人物としても描かれる。
その多面性が、物語に奥行きを与えた。視聴者は、事件の結末だけでなく、レディントンが次に何を語るのか、誰を信頼し、何を隠しているのかにも関心を向けることになる。
このように、主人公の言葉や振る舞いそのものが次の展開への期待を生み出す点は、スペイダーの演技の大きな特徴といえる。
▪️『ボストン・リーガル』などで培った演技力
スペイダーは『ブラックリスト』で突然ブレークした俳優ではない。
法廷ドラマ『ザ・プラクティス』や、そのスピンオフ作品『ボストン・リーガル』でも知られ、知性と個性を併せ持つ人物を演じて評価されてきた。『ボストン・リーガル』ではアラン・ショア役を演じ、エミー賞の主演男優賞を受賞するなど、テレビドラマの世界でも確かな実績を積み重ねている。
スペイダーの演技には、単純な善悪の区分に収まらない人物を魅力的に見せる力がある。理性的でありながら予測不能。冷静に見えて、内側には強い感情を抱えている。そうした相反する要素を同時に成立させることが、彼の持ち味だ。
ウルトロンとレディントンは、設定も物語の世界も大きく異なる。しかし、どちらも知性と独自の論理を持ち、相手との会話を通じて存在感を発揮するキャラクターである。その意味で、スペイダーの個性が両者に生かされていることは興味深い。
▪️10年間、同じ主人公を演じ続けるということ
『ブラックリスト』の10シーズン218話という実績は、単に長く放送されたというだけではない。
長期シリーズでは、登場人物の関係性や過去の出来事を積み重ねながら、新たな事件や謎を提示し続ける必要がある。主演俳優には、キャラクターの一貫性を保ちながら、その時々の状況に応じた変化を表現することが求められる。
レディントンという人物は、物語が進むにつれて、犯罪者としての顔だけでは説明できない側面を見せていった。スペイダーは、せりふの選び方や表情、沈黙の使い方を通じて、視聴者が簡単には理解しきれない人物像を作り上げた。
一方、マーベル作品のウルトロンは、人工知能としての論理と、人類を脅威と見なす極端な判断を併せ持つ存在だ。人間とは異なる価値観を持つキャラクターに説得力を与えるうえでも、スペイダーの声と演技は重要な役割を果たしている。
長年の海外ドラマファンにとって、ウルトロン役での復帰は、スペイダーのキャリアを改めて振り返る機会にもなるだろう。
▪️俳優ジェームズ・スペイダーの魅力が再び注目される理由
大作映画の悪役として世界的な知名度を得た俳優が、テレビドラマで10年にわたり主人公を演じ、さらに再びマーベル作品へ戻る。そのキャリアは、スペイダーが異なるジャンルの作品で存在感を発揮してきたことを物語っている。
『ブラックリスト』が米国で長期シリーズとして成立した背景には、犯罪サスペンスとしての構成に加え、レディントンという人物の謎と魅力があった。そして、その人物を成立させた中心にいたのがスペイダーだ。
ウルトロンという人工知能の悪役もまた、単なる破壊者としてではなく、独自の論理と強烈な個性を持つ存在として描かれた。レディントンとウルトロンは別々の世界に属するキャラクターだが、どちらにもスペイダーならではの知的な存在感が刻まれている。
Disney+での再登場を機に、『ブラックリスト』をまだ見ていない視聴者が過去の代表作に関心を持つことも考えられる。映画のキャラクターだけでは捉えきれない俳優の魅力を知るうえで、全10シーズンの『ブラックリスト』は見逃せない作品の一つだ。
【文:高須基一朗 瞬刊モッツ 編集部】




