台湾版『梨泰院クラス』ヒロインが芸能界での性被害を告発 実名公表せず証言
香港の女優アンジェラ・ユンさんが、芸能活動を続けるなかで経験したというセクシュアルハラスメントや、同意のない身体的接触について告発した。取材現場での女性蔑視と受け取れる発言から、撮影現場での台本にないキスまで、本人がSNSで明かした内容は多岐にわたる。映画やドラマの制作に携わる関係者の言動と、出演者が安心して働ける環境のあり方が改めて問われている。
▪️12年間も繰り返し被害を受けてきたと明かした芸能活動の実情
中華圏メディアの報道によると、アンジェラ・ユンさんは10月12日、自身のSNSに長文を投稿。2013年のデビュー以降、約12年間にわたり、記者や監督、共演した男性俳優らからセクハラや不適切な身体的接触を受けてきたと訴えた。
ユンさんの告発で注目されるのは、問題が撮影現場だけにとどまらず、作品の宣伝を目的とした取材や、関係者が集まる会食の席にも及んでいたとされる点だ。
映画やドラマの仕事では、出演者が監督や共演者、報道関係者と接する機会が多い。作品を世に送り出すために協力する関係だからこそ、立場の違いを背景にした不適切な言動があった場合、当事者が声を上げにくくなる可能性もある。
ユンさんの証言は、芸能活動の現場における人間関係や、仕事上の立場を利用した言動について考えるきっかけとなりそうだ。
▪️映画の宣伝取材で不適切な発言 女性への配慮を欠く言葉に抗議
ユンさんが挙げた事例の一つが、映画の宣伝に伴うインタビューでの出来事だ。
本人の説明によると、2026年初め、ある雑誌の編集長を務める男性記者が、取材に参加していた女優たちに向かって「夜の店に座っているようだ」という趣旨の発言をしたという。
ユンさんは、この発言を女性を性的な対象として扱うものと受け止め、強い屈辱感を覚えたと振り返っている。
さらに、相手に対して発言が不適切であると指摘し、発言をやめるか謝罪するよう求めたものの、最後まで謝罪はなかったと主張した。
映画の宣伝取材は、作品の魅力や出演者の思いを読者に伝えるための場だ。出演者の外見や服装に言及する場合であっても、相手の尊厳を損なう表現が許されるわけではない。
取材する側と受ける側という立場の違いがあるなかで、出演者が不適切だと感じた言動に異議を唱えた際、どのように対応するのか。メディア関係者にも、改めて節度ある取材姿勢が求められる。
▪️監督や共演俳優の言動も告発 会食での発言に不快感
ユンさんは、映画やドラマの制作に関わる男性監督や共演俳優の言動についても証言した。
ある男性監督からは、自身の容姿について否定的な評価を口にされたうえで、「君と友達になりたい」という趣旨の言葉をかけられたという。ユンさんは、この発言についても不適切な言動として取り上げている。
また、日本語を話すことができる共演の男性俳優が、会食の席で酒に酔い、ユンさんが日本語を理解できないと思い込んだまま、日本語で性的に不適切な発言をしたとも主張した。
仕事上の関係者が集まる会食は、出演者同士や制作スタッフが交流を深める機会にもなる。一方、酒席であることや、相手が言葉を理解できないと思い込んでいることを理由に、相手の尊厳を損なう発言が正当化されるわけではない。
ユンさんの証言は、撮影や取材の本番以外の場でも、出演者が置かれる環境に目を向ける必要性を示している。
▪️台本にないキスも主張 撮影現場で求められる同意
今回の告発のなかでも、撮影現場における身体的接触についての証言は重要な論点だ。
ユンさんによると、ある撮影現場で、年長の男性俳優から「キスしたい」という趣旨の言葉を冗談めかして投げかけられ、その後、事前の相談がないまま、台本にも記載されていないキスを頬にされたという。
映像作品では、役柄や演出上の必要性から、出演者同士が身体的に接触する場面が設けられることがある。しかし、演技として身体的接触が必要な場合と、本人の同意を得ずに接触することは別の問題だ。
冗談のつもりだったとしても、相手が望んでいない接触まで許されるわけではない。撮影現場では、演出の意図を共有し、出演者の意思や安全に配慮することが重要になる。
さらにユンさんは、別の男性俳優が、撮影監督にカメラを高い位置に設置させ、女優たちの胸を撮影させたと話していたことも明かした。
これらはユンさんが公表した証言に基づく内容であり、個々の出来事について第三者による検証がどこまで進んでいるかは、現時点で確認できていない。具体的な人物名や作品名も、今回の情報だけでは特定できないため、告発の内容と確認済みの事実を区別して受け止める必要がある。
▪️『星くずの片隅で』で評価『梨泰院クラス』の台湾ドラマ版でもヒロインに
アンジェラ・ユンさんは2013年にデビューした香港の女優だ。
映画『星くずの片隅で』では、2022年の台湾・金馬奨の主演女優賞、2023年の香港電影金像奨の主演女優賞にノミネートされた実績を持つ。
また、韓国の人気ウェブ漫画を原作とする『梨泰院クラス』の台湾ドラマ版『Fired Up!』では、原作のチョ・イソに相当するヒロインを演じた。
国や地域を越えて映像作品が展開されるなか、俳優には演技力だけでなく、国際的な制作環境や多様な文化圏での活動も求められる。ユンさんも、こうした作品への出演を通じて知られる存在となっている。
今回の告発は、作品の評価や知名度とは別に、出演者が仕事の現場でどのような経験をしてきたのかという問題を浮かび上がらせた。

