NBA 2026-ドラフト1位 最有力候補の AJ・ディバンツァが示した異質な存在感…NBA入り目前でも「教育」を語り続ける理由
2026年のNBAドラフトで全体1位指名の最有力候補と目されるAJ・ディバンツァ選手が、シカゴで開催されたドラフトコンバインで圧倒的な身体能力を披露した。
身長208センチ、体重98キロ。
ウイングスパン214センチ、スタンディングリーチ269センチという規格外のサイズに加え、助走ありの垂直跳びは106センチを記録。
スプリント能力でも高水準の数値を叩き出し、
改めて“世代最高級タレント”であることを証明した。
だが、会場で本当の意味で異彩を放っていたのは、そのフィジカルではなかった。
他のドラフト候補生たちが練習後のラフなジャージ姿で取材エリアに現れる中、ディバンツァ選手はチェック柄のスーツにネクタイを締め、まるで金融街の若手ビジネスマンのような装いで登場した。
その理由について、彼は笑みを交えながらこう語っている。
「今日は複数のチームとの面談があった。僕は13歳の頃からバスケットボールを“仕事”として捉えてきたけど、実際には働いた経験はない。だからこれは就職面接みたいなものだと思ったんだ。父からも『面接にはスーツで行くものだ』と言われてね」
スター候補らしい自信を漂わせながらも、言葉の端々には育ちの良さと知性がにじむ。
ボストン郊外ブロックトン出身のディバンツァ選手は、幼少期からのセルティックスファンとして知られる。プレースタイルやサイズ感からは、
しばしば ジェイソン・テイタム選手と比較される存在だ。
本人もその評価を光栄に感じている一方で、「ドラフトされれば、セルティックスファンとして表に出るのは今季が最後」と口にするなど、すでに“NBA選手としての振る舞い”を強く意識している。
幼少期に憧れたのは トレイシー・マグレディ氏。現在、最も好きな選手として名前を挙げるのは ケビン・デュラント選手だ。
一方で、プレーヤーとしての自己分析も極めて冷静だ。
「ガードとしてゲームを組み立てることもできるし、KD(ケイディー/デュラント選手)のように自分で展開しながら得点も演出もできる。オンボールでもオフボールでもプレーできるし、必要ならペイントに切り込んで周囲を生かすこともできる。どんな役割でも受け入れるつもりだ」
得点能力ばかりに注目が集まる中で、彼は“万能性”こそ自らの本質だと語る。
もっとも、ディバンツァ選手の真価はバスケットボール以外の部分にあるのかもしれない。
先月、NBAドラフトへの正式エントリーを表明した際、彼は単なる記者会見ではなく、「AJ・ディバンツァ基金」の設立発表も同時に行った。会場に選んだのは、自身が通ったデイビスK-8スクール。原点とも言える小学校だった。
その場で彼は、「教育機会の拡充」を活動理念として掲げている。
「子供たちに伝えたいのは、とにかく学校へ行ってほしいということ。シンプルだけど、本当に大切なんだ」
そう語った彼は、幼少期に“将来の夢”を書く授業で「NBA選手になりたい」と記したエピソードも明かした。
「先生が僕の夢を本気で信じてくれた。だから今の自分がある」
そして、彼の教育観は“綺麗事”では終わらない。
NBA入り後も、在籍する ブリガムヤング大学に籍を残し、
オンライン授業で学位取得を目指すことを公言している。
「両親は、僕にNBA選手になってほしかったというより、大学へ進学してほしかったんだ。だからNBAに入った後も卒業は必ずすると約束した。時間はかかっても、4年後には学位を取れると思う」
現代のNBAでは、スター候補生がブランド価値やSNS戦略を語ることは珍しくない。しかし、19歳のドラフト候補が“教育の継続”をこれほど真剣に語るケースは極めて異例だ。
質疑応答の最後、ディバンツァ選手は取材陣だけでなく、会場後方で見学していた子供たちにも質問を募った。
シュート練習のコツ、試合前のルーティン、好きな授業。
少年少女たちの質問に笑顔で応じる姿は、“次世代スター”というより、すでに地域コミュニティのロールモデルそのものだった。
そして最後に、彼は静かな口調でこう締めくくった。
「誰もがNBAに行けるわけじゃない。でも教育は、誰にでも開かれている。教育は、NBAが僕を連れていく場所より、もっと遠くへ連れていってくれると思う。バスケットボール選手でなくても、俳優でなくても、教育があれば人生は豊かになるんだ」
NBAで成功するために必要なのは、サイズや身体能力だけではない。競争に耐え抜く精神力、継続する覚悟、周囲との関係性―そのすべてが問われる世界だ。
AJ・ディバンツァ選手には、その土台となる“人間性”がすでに備わっている。
だからこそ、彼は単なるドラフト1位候補ではなく、関係各所で既に「NBAの未来」と礼賛されているのだろう。

