19歳の最後の日(翌日3月8日が誕生日20歳)が示した“引き算の進化” 秋元強真選手ミックス撃破で世界に宣戦布告―継承された朝倉イズムと、大晦日王座戦の現実味
【©️RIZIN FF】
格闘技において成長とは、必ずしも「足し算」ではない。
むしろ、無駄を削ぎ落とす“引き算”の先に、本当の強さが姿を現すことがある。
3月7日、東京・有明アリーナで開催された「RIZIN.52」。
メインイベントのフェザー級(66キロ)MMAルールで、秋元強真選手(JAPAN TOP TEAM)が、元Bellator MMAバンタム級王者のパッチー・ミックスをTKOで下した。
世界的実績を誇るミックスを相手に、試合は驚くほど冷静だった。
1ラウンド、秋元選手は、カウンター気味に左のパンチを当てこみ相手をぐらつかせる。
続く2ラウンドでもパンチで再び崩すと、最後はサッカーボールキックを叩き込み、レフェリーが試合を止めた。
だが、この勝利の本質は、派手なフィニッシュではない。
むしろ、試合全体に漂っていた“削ぎ落とされた戦い方”にあった。
世界トップクラスのグラップラーであるミックスに対し、秋元選手が徹底したのは「距離」の管理だった。
「一定の距離を保つ。来たら下がる。それを徹底しました」
試合後、そう語った言葉はシンプルだ。しかし、そのシンプルさこそが今回の勝利の核心だった。
不用意に組み合わない。無理に攻め込まない。
危険な局面を排除しながら、確実に打撃で削る。
それはまさに、戦術の“引き算”だった。
その裏付けとなったのが、寝技対策だ。
秋元選手は、この試合へ向けて練習で、青木真也選手らとグラップリングを徹底的に磨いてきたという。
「寝技の要素が不安だったんですけど、本当に青木さんとできて、自信がありました」
守りの準備があるからこそ、攻撃に迷いがない。
その構造を理解している点に、彼の非凡さがある。
もっとも、この夜の秋元選手が見せた最大の強さは、技術以上に“精神”だったのかもしれない。
「強気のことを言ってきましたが、恐怖心との戦いでした。試合は毎回怖いです」
そう正直に試合後に語った。
だが、その恐怖から逃げない。むしろ受け入れたうえで前へ出る。
その姿勢は、近年RIZINでひとつの文化となった“覚悟の格闘技”と重なる。
それは、朝倉未来選手や朝倉海選手らが体現してきた精神―いわば“朝倉イズム”と呼ぶべきものだ。
世界の強豪を日本に呼び込み、リングで迎え撃つ。
逃げない。
そして勝つ。
秋元選手もまた、その思想を受け継ぐように言い切った。
「UFCに行こうとか、そういう考えは全くない。僕とやりたいんだったら、日本に来い」
今日で20歳となった言葉とは思えないほど、堂々としていた。
現在、RIZINフェザー級には絶対王者がいる。
ヴガール・ケラモフから王座を奪取し、圧倒的な強さで君臨するラジャブアリ・シェイドライエフだ。
秋元選手は試合後、その名前こそ口にしなかった。
だが、この日の勝利によって、ひとつのシナリオは現実味を帯び始めた。
RIZINの年間最大イベント―大晦日。
もし秋元が次戦でも勝利を重ねれば、最短でその舞台で王者シェイドライエフへの挑戦が実現する可能性は十分にある。このの成長速度は驚くほど合理的だ。
派手な技を増やすわけではない。
むしろ不要な動きを削り、戦いを研ぎ澄ませていく。
その“引き算の進化”が続く限り、日本の総合格闘技界の
さらなる黄金期は、想像以上に早く訪れるのかもしれない。
【文:高須基一朗】

