「宣伝は内輪で完結するもの」劇場版 名探偵コナンの製作委員会が初めて明かした“方針”と『風のプロジェクト』の本当の狙い

2026.2.8

【©2026 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会】

劇場版『名探偵コナン』シリーズ第29作『名探偵コナン ハイウェイの堕天使』(4月10日公開)をめぐり、製作委員会が極めて異例の対応に踏み切った。作品そのものではなく、「宣伝の考え方」を、公式声明として公表したのだ。

長年にわたり国民的コンテンツとして確固たる地位を築いてきた『名探偵コナン』において、宣伝方針が製作委員会の外に向けて明確に語られるのは、シリーズ史上初の出来事である。

 その中核に据えられたのが、今回始動した<風のプロジェクト>だ。


 

▪️30年続いた巨大IPが抱える“次の課題”

テレビアニメは今年で30周年、劇場版は来年2027年に30周年を迎える。数字だけを見れば、コナンはすでに完成されたブランドだ。しかし、製作委員会はその安定を“完成形”とは捉えていない。

公式アカウント発表で、繰り返し強調されたのは、「支えてくれたファン」だけでなく、「最近出会ったファン」「久しぶりに戻ってきたファン」という言葉だ。これは、固定ファン層に依存するのではなく、作品との関係性が異なる人々をどう再び巻き込むかという、長期シリーズ特有の課題意識をにじませている。

今回の宣伝コンセプト「fan!×FAN!=FUN!」は、その象徴と言える。
宣伝を“受け取る側”にとどめず、ファン自身を「小さな風を起こす存在」として位置づけ、日本列島規模のムーブメントへと広げていく。その思想を、あえて外部に明かした点に、このプロジェクトの覚悟がある。

 

▪️“ネタバレ厳禁”と“参加型”を両立させる試み

具体策も従来の延長線上にとどまらない。LINE公式アカウントを通じ、誰でも“風の宣伝部”として参加できる仕組みを導入。情報解禁を一方的に受け取るのではなく、宣伝そのものに関わる体験型施策へと踏み込んだ。

一方で、公開前の試写会を行わない方針は今年も継続される。「ネタバレなく本編を楽しんでほしい」というシリーズ一貫の姿勢を崩さず、代替として屋外ファンミーティングを実施する判断は、慎重さと挑戦を同時に抱えたコナンらしいバランス感覚とも言える。

 

▪️映画館の外へ吹き出す“風”

さらに、体験型スタンディや横浜市との大規模コラボレーションなど、映画館という枠を越えた施策も用意された。舞台となる横浜そのものを巻き込み、「作品の世界に触れる導線」を日常空間へ広げようという狙いが透けて見える。

重要なのは、これらの施策が単なる話題作りではなく、宣伝思想とセットで語られている点だ。だからこそ製作委員会は、あえて声明文という形式を選び、その考えをファンと共有した。

情報管理を徹底し、宣伝の内側を語らない─それは長年、コナンが守ってきた成功の型だった。その“常識”を崩してまで始動した<風のプロジェクト>は、30年目の節目における、次の10年を見据えた戦略とも言える。