「試合中に心が折れかけたのは初めて」那須川龍心選手、絶体絶命からの逆転KO―王座決定戦で見せた“覚醒の最終ラウンド”

2026.3.28

RISE両国国技館大会のセミファイナルで行われたRISEスーパーフライ級王座決定戦は、技術戦の様相から一転、最後の最後で試合の意味そのものが変わる劇的な結末を迎えた。勝者となったのは、劣勢に追い込まれていた那須川龍心選手だった。

試合後、那須川選手は、声を震わせながら熱く語った。

「試合中に挫けそうになったのは、初めてでした」

その言葉こそ、この試合のすべてを物語っていた。


 

▪️距離を支配された4ラウンド

試合は序盤から、長谷川海翔選手のペースだった。
左構えの兄、那須川天心選手を少し想像されるサウスポースタイルから長い距離を保ち、的確に当てて離れる。

派手なダメージこそないが、確実にポイントを積み重ねる戦い方。

いわば“勝つための試合運び”だった。

1ラウンドから4ラウンドまで、試合の主導権は常に長谷川選手。
距離を制され、踏み込めない那須川選手。

焦りだけが積み重なっていく。

ポイントは4ポイント差。
最終ラウンドを前に、那須川選手に残された道は一つ。

KOしかない。

判定では届かない。
技術でも流れでも負けている。
残されたのは、リスクをすべて背負う捨て身のラッシュでの戦い方だけだった。

 

▪️覚悟を決めた最終ラウンド

最終ラウンド、那須川選手の戦い方はそれまでとは明らかに違っていた。
距離を詰める。被弾も覚悟で前に出る。丁寧に崩すいつものスタイルを捨てて、当てにいくのではなく、体ごと体重を乗せて拳を打ち込んで倒しにいく戦いだった。

そして、その瞬間は最終ラウンド開始直後に突然訪れる。

距離が詰まった瞬間、
那須川の左右のショートフックがカウンター気味に連続してヒット。
長谷川選手が崩れ、最初のダウン。

ここで試合の空気が一変した。

それまで支配していたはずの長谷川選手が下がり、
追う側だった那須川選手が、一気に試合の中心に立つ。

さらに前へ出る那須川選手。
もう技術でもポイントでもない。完全に“気持ちのラウンド”になっていた。

 

▪️捨て身の連打、そしてTKO

2度目のダウンを奪った那須川選手は、止まらなかった。
冷静さよりも本能、戦術よりも執念。捨て身のパンチ連打でコーナーへ追い込む。

コーナーで防戦一方となったところで、レフェリーが試合を止めた。
TKO決着。

劣勢からの、完全な逆転KOだった。

 

▪️心が折れかけた、その先にあったもの

試合後、那須川は「試合中に挫けそうになったのは初めて」と語った。
それはつまり、これまで彼は試合の中で絶望的な状況を経験してこなかったということでもある。

しかし、この試合で彼は経験した。

勝てないかもしれない。
届かないかもしれない。
このまま負けるかもしれない。

その状況から、それでも前に出た。
倒されるかもしれないリスクを背負って、倒しにいった。

この試合は王座決定戦だったが、
それ以上に、那須川龍心がファイターとして一段階上に上がった試合だったとも言える。

この53キロの軽量級での逆転KOを考えると、単なる1勝ではなく、

とてつもなく価値の大きなものとなった。