東京五輪金メダリスト 高藤直寿選手が現役引退「勝てない自分に価値はない」25年の柔道人生に幕

2026.3.9

男子柔道60キロ級で東京五輪の金メダルを獲得した高藤直寿選手(32=パーク24)が3月9日、都内で会見を開き、現役引退を発表した。世界の頂点に立った名手は「勝てない自分に価値はない」と語り、約四半世紀に及ぶ競技人生に終止符を打つ決断を明かした。


 

▪️五輪王者の決断・・・静かな口調で語った引退

会見場に姿を現した高藤選手は、紺色のストライプスーツに赤いネクタイ姿。入口で深く一礼すると、落ち着いた口調でこう切り出した。

「柔道選手として一区切りをつけることを決めました。これまで多くの方に支えられ、ここまでやりきることができました」

1990年代後半に柔道を始めて以来、約25年間にわたり畳の上で戦い続けてきたキャリアに、自ら終止符を打つ決断だった。

 

▪️引退を決断させた「敗戦」

転機となったのは、2024年11月の国内大会だった。
敗退を喫した瞬間、次の五輪への道が現実的ではないと感じたという。

「負けたときに、ロサンゼルス五輪は厳しいと思った。諦めたくない気持ちはあったけれど、後輩が勝ったときに純粋にうれしかった。選手として戦うべきではないのかもしれないと感じた」

そして、トップアスリートらしい厳しい自己評価も口にした。

「もう負けたくない。勝てない自分に価値はないと思った」

 

▪️少年時代から世界の頂点へ

埼玉県生まれの高藤は7歳で柔道を始め、早くから才能を発揮。
神奈川の名門・東海大相模中では全国中学校大会を制し、高校時代には世界カデ、世界ジュニアを制覇するなど、早くから“世界級”の存在として注目を集めた。

大学進学後も国際大会で活躍を重ね、2016年にはパーク24に入社。

同年のリオデジャネイロオリンピックでは銅メダルを獲得した。

そしてキャリアの頂点となったのが、2021年の東京オリンピック。
日本勢の金メダル第1号として男子60キロ級を制し、悲願の五輪王者の称号を手にした。

 

▪️ケガと挫折、それでも畳へ

その後は2連覇を目指して挑んだパリオリンピックの代表争いで敗れ、進退を模索する時期もあった。

一時は引退を考えながらも現役続行を決断。左膝の靱帯断裂という大けがを乗り越え、再び畳に戻った。
昨年の実業団大会では3位に入り、なおも競技への意欲を示していた。

 

▪️次の舞台は「指導者」

今後は所属するパーク24で男子チームのコーチ、さらに女子チームのアドバイザーとして後進の育成に携わる予定だ。

柔道とともに歩んできた人生を振り返り、最後は穏やかな表情で語った。

「僕にとって柔道は自分の道でした。柔道が道をつくってくれて、その上を歩いてきた。これからもこの道を歩み続けていきたい」

世界を制した小兵の名手は、畳を離れてもなお、柔道の世界で新たな歩みを始める。