“氷上の女王”が最後の滑走 高木美帆選手 世界選手権総合3位で現役引退「ありがとう、そしてさようなら」

2026.3.9

【©️ISU】

スピードスケート界を長年けん引してきた 高木美帆選手 が、ついに競技生活に幕を下ろした。

オランダ・ヘーレンフェインで行われたスピードスケート世界選手権・最終日(3月8日)、女子オールラウンド部門の後半種目が実施され、今大会限りで引退を表明している高木は総合3位でフィニッシュ。リンクに向かって笑顔で手を振り、「ありがとう、そしてさようなら」と英語でファンへ別れの言葉を送った。

会場を包んだ大きな拍手は、長年氷上で輝き続けた“レジェンド”への最大の敬意だった。


 

▪️得意の1500メートルで意地の滑り

前日の前半2種目では500メートルを制するなど総合首位で折り返した高木選手。
後半最初の1500メートルでは、序盤から積極的に飛ばす持ち味のレースを展開する。

自身が世界記録を保持する距離で、タイムは1分53秒48。結果は2位だったが、フィニッシュ後には大きくうなずきながらガッツポーズ。最後までトップレベルの滑りを見せつけた。

そして迎えた最終種目5000メートル。
スタート前の場内アナウンスでは高木を「Living Legend(生きる伝説)」と紹介。世界のスケートファンからの敬意が込められた瞬間だった。

レースでは7分1秒50で6位。

順位こそ落としたが、総合3位を守り切り、有終の表彰台を確保した。

 

▪️倒れ込むほどの全力 リンクに別れ

全力を出し切ったレース直後、高木選手は氷上に仰向けに倒れ込んだ。
死力を尽くしたラストラン。立ち上がると、観客席からの大歓声に笑顔で手を振り応えた。

インタビューでは、穏やかな表情でこう語った。

「ファンの皆さんには、ありがとう、そしてさようならと伝えたいです」

長く世界の頂点を争い続けてきたアスリートの、静かなラストメッセージだった。

 

▪️“スーパー中学生”から始まった伝説

高木選手が世界の舞台に登場したのは15歳。
2010年の バンクーバーオリンピック に“スーパー中学生”として出場し、一躍注目を集めた。

その後はスピードスケート界の中心選手として活躍。
平昌オリンピック では団体追い抜きで金メダル、北京オリンピック では1000メートルで金メダルを獲得するなど、日本女子スケートの歴史を塗り替えてきた。

今年2月の ミラノ・コルティナオリンピック でも500メートル、1000メートル、団体追い抜きで銅メダルを獲得。
五輪メダル総数は10個に到達し、日本女子最多という金字塔を打ち立てた。

 

▪️挑戦を続けた最後のシーズン

18年以降は「これが最後」という覚悟を胸に、毎シーズンを戦い抜いてきた高木。
3年前には自ら「チーム・ゴールド」を立ち上げ、競技力向上のための環境づくりにも挑戦した。

ラストレースの舞台に選んだのは、2018年に日本勢初の総合優勝を果たした思い出の世界選手権。
「残りの期間も変わらず高みへ挑み続ける」と語っていた通り、最後まで限界へ挑戦し続けた。