ミラノ・コルティナ五輪で開催前にドーピング違反 イタリア代表女子選手が陽性、厳格な国際規制が即時適用

2026.2.3

 

【©️IBU】

ミラノ・コルティナ冬季五輪を巡り、早くもドーピング違反の疑いが浮上した。

国際バイアスロン連合(IBU)は2日、バイアスロン女子イタリア代表のレベッカ・パスラー(24)が実施されたドーピング検査で陽性反応を示したと発表した。


 

検査はイタリア反ドーピング機関(NADO Italia)が行い、

結果を受けてパスラーには暫定的な資格停止処分が科された。

伊紙「ガゼッタ・デロ・スポルト」(電子版)によると、

ミラノ・コルティナ五輪の出場資格を有する選手の中で、

ドーピング違反が公表されたのは初めてとみられる。

検体から検出されたのは、乳がん治療などに用いられるレトロゾール。

これは世界反ドーピング機構(WADA)が定める「禁止表国際基準」において、

競技会内外を問わず使用が全面的に禁止されている物質に該当する。

五輪におけるドーピング規制は、単なる競技規則ではない。

WADAコードは国際競技団体および各国反ドーピング機関に対し、国内法に準じた拘束力を持つ「国際統一ルール」として運用されており、違反が認定された場合、選手の故意・過失の有無にかかわらず厳しい制裁が科される。いわゆる**「厳格責任原則」**が採用されている点が最大の特徴だ。

今回のケースでも、選手側が医療目的や意図しない摂取を主張したとしても、事前に治療使用特例(TUE)を取得していなければ違反は成立する可能性が高い。

今後、B検体の分析や聴聞手続きを経て最終判断が下されるが、違反が確定すれば、五輪出場資格の剝奪にとどまらず、長期の資格停止処分が科される可能性もある。

ミラノ・コルティナ五輪は「クリーンな大会」を掲げ、

開催国イタリアも反ドーピング体制の強化を進めてきた。

その中で明らかになった今回の事案は、

五輪におけるドーピング規制が、刑罰に近い厳格さをもって

即時に発動される現実を改めて浮き彫りにした。

 

▪️冬季五輪の「バイアスロン」とは何か!?

極限の持久力と静寂の集中力が交差する競技

 

冬季五輪におけるバイアスロンは、クロスカントリースキーとライフル射撃を組み合わせた競技で、持久力と精密性という相反する能力が同時に求められる点が最大の特徴だ。氷点下の過酷な環境で心拍数を極限まで高めながら滑走し、その直後に呼吸を整えて正確な射撃を行う―五輪競技の中でも特異な存在として知られている。

 

競技は、選手がクロスカントリースキーで一定距離を滑走し、途中に設けられた射撃場で標的を撃つという流れで進む。射撃には「伏射(ふくしゃ)」とうつ伏せで撃つ姿勢と、「立射(りっしゃ)」と立ったまま撃つ姿勢があり、いずれも標的までの距離は50メートル。使用されるライフルは小口径の22口径で、選手は約3.5キロの銃を背中に背負ったまま滑走する。

 

射撃を外した場合にはペナルティが科される。

多くの種目では、外した弾数に応じて1回150メートルのペナルティループを追加で滑走する必要があり、わずかなミスが順位を大きく左右する。個人種目では、外した分だけタイムが加算される方式も採用されている。

五輪で実施される主な種目は、個人、スプリント、パシュート(追い抜き方式)、マススタート、リレー、混合リレー。特にスプリントとパシュートは前レースの結果が次のレースのスタート順に直結するため、逆転や脱落が頻発し、ドラマ性の高い展開が生まれやすい。

バイアスロンの醍醐味は、スキーのスピードだけでも、射撃の正確さだけでも勝てない点にある。滑走力で優位に立っても射撃で崩れれば一気に後退し、逆に射撃で安定感を見せれば上位に食い込むことができる。体力、技術、精神力を総合的に試される競技と言える。

 

日本では知名度が高いとは言えないが、ノルウェーやドイツ、フランスなどヨーロッパでは非常に人気が高く、ワールドカップや五輪ではスタジアムが満員になることも珍しくない。選手が国民的スターとして扱われる国もあり、冬季スポーツ文化を象徴する競技の一つとなっている。

静寂の射撃場と、激しい滑走が交互に訪れるバイアスロン。冬季五輪の中でも、最も人間の総合力が試される競技の一つとして、注目度は年々高まりつつある。