DAZNが声明発表「W杯放映権は現時点で未決定」世界的に高騰する放映権市場、透明性が問われる局面も

2025.11.4

スポーツ・チャンネル『DAZN(ダゾーン)』は4日、

一部メディアで報じられた2026年FIFAワールドカップの

放映権取得に関する報道に対し、正式な声明を発表した。

同社は声明で、「本日の一部報道で取り上げられておりますFIFAワールドカップ26の放映権につきまして、現時点では決定している事実はございません」と明言。

そのうえで「今後とも、ファンのみなさまに最高のスポーツ体験をお届けできるよう全力で取り組んでまいります」としている。


■ 世界的に高騰する「放映権料」市場の現実

近年、FIFAワールドカップやオリンピックをはじめとする国際大会の放映権料は世界的に高騰している。
背景には、サブスクリプション型ストリーミングサービスの台頭による配信プラットフォーム間の熾烈な競争がある。従来はテレビ局が中心だった放送権争奪戦に、Netflix、Amazon Prime Video、Apple TV、そしてDAZNなどの新興勢力が参入。特にライブ配信が唯一無二の価値を持つスポーツ分野では、放映権が「最後の独占コンテンツ」とも呼ばれている。

英国プレミアリーグの国内放映権料は2022年時点で約51億ポンド(約9,500億円)に達し、アメリカのNFLやNBAでも放映権契約が過去最高額を更新。FIFAワールドカップも例外ではなく、2018年大会では世界全体で推定30億ドルを超える権利収入を記録したとされる。

 

■ 法律が定める「放映権」の枠組みとは

放映権(broadcasting rights)は、著作権法上の「伝達権(公衆送信権)」の一部として扱われる。
日本では「著作権法第92条」などに基づき、放送事業者が映像・音声を独占的に公衆に伝達する権利を有する。また、国際的にも「ローマ条約」や「WIPO著作権条約」により、放送事業者の権利保護が強化されている。

ただし、放映権の集中や価格高騰が「市場独占」「視聴の機会の不平等」につながる懸念もある。欧州ではEU競争法(Competition Law)に基づき、放送権の一括販売や独占契約を制限する動きも進む。
日本でも公正取引委員会が放送・配信分野における過度な囲い込みを注視しており、法と市場のバランスが問われる時代に入っている。

 

■ DAZNの今後の動向にも注目

今回のW杯放映権をめぐる報道は、国内視聴者の関心を大きく集めている。
DAZNは既にJリーグやAFCアジアカップなど多くの大会で放映権を保持しており、FIFAワールドカップ参入が実現すれば、配信市場全体の勢力図を塗り替える可能性もある。

一方で、世界的な放映権料の高騰が続く中、放送・配信企業の投資リスクや、消費者負担の増加も無視できない。
スポーツビジネスの「権利と公共性」をいかに両立させるか!?