実写ヒーロー離れが示す時代の変化 半世紀の「スーパー戦隊シリーズ」が終焉へ

1975年に放送を開始した「秘密戦隊ゴレンジャー」から数えて、50年の歴史を誇る特撮ヒーロー番組「スーパー戦隊シリーズ」が、現在放送中の『ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー』(テレビ朝日系)をもって終了することが関係者への取材で明らかになった。
長年、日曜朝の定番として世代を超えて親しまれてきたシリーズが、その幕を閉じる。
番組の終了背景には、単なる少子化だけではなく、子どもたちのエンターテインメント消費の変化がある。スマートフォンや動画配信、SNS、さらにはアニメやVTuberといったデジタルコンテンツが台頭し、実写の特撮ヒーローが持っていた“現実と虚構の境界を越える魅力”は、かつてほど強く響かなくなっている。
関係者によれば、イベントや関連グッズ、劇場版映画などの収益が年々減少。
番組制作費に見合う採算が取りにくくなったことが、放送終了の一因とみられる。
例年この時期に行われる次回作の商標登録申請も今年は確認されず、
ファンの間では早くから「次はどうなるのか」と不安視する声が広がっていた。
「スーパー戦隊」シリーズは、動物や恐竜などをモチーフに、色分けされたヒーローが巨大ロボットとともに悪に立ち向かうという構成で人気を博した。変身アイテムや合体ロボなどの商品展開も、長年にわたり子どもたちの憧れを形にしてきた。
しかし、デジタル世代の子どもたちにとっては、CGを駆使したアニメーションやリアルタイムで交流できるゲームの方が「体験」として身近なヒーローとなっている。
一方で、同シリーズはこれまでに松坂桃李さん(『侍戦隊シンケンジャー』)、山田裕貴さん(『海賊戦隊ゴーカイジャー』)、横浜流星さん(『烈車戦隊トッキュウジャー』)ら、
現在の日本の映像界をけん引する俳優を数多く輩出してきた。
若手俳優の登竜門としての役割を果たしてきた点も、文化的遺産といえるだろう。
日本のアニメ作品、鬼滅の刃やチェーンソーマンなど次々に国際的な成功を収める中で、
実写ヒーロー番組というフォーマットが時代に合わなくなりつつあることを、
今回の決定は象徴している。
現実とデジタルのあいだで育つ子どもたちにとって、
“憧れのヒーロー”の形が変わってきているのは否めない。
テレビ朝日は「編成についてはお答えしておりません」とコメントしているが、
戦隊ヒーローが果たしてきた役割と、
その終焉が示す文化的転換点は決して小さくない。
