オンラインカジノ利用は違法か―不起訴の背景と見えない“グレーゾーン”の実態
2024年6月26日、東京地方検察庁は、海外運営のオンラインカジノで賭博を行ったとして書類送検されていたプロ野球・読売ジャイアンツのオコエ瑠偉選手と増田大輝選手を不起訴処分とした。
一方で、この処分に対し「違法行為に当たらないのか」と疑問の声も多く上がっている。今回の件は、個人が日本国内から海外の賭博サイトにアクセスした場合の法的なグレーゾーンと、その社会的な影響を改めて浮き彫りにした。
▪️「海外サイトならOK」は誤解
オコエ選手は2022年から2023年、増田選手は2024年に、日本国内から海外のオンラインカジノ「ワンダーカジノ」などに接続。ブラックジャックやバカラをプレイし、オコエ選手は約700万円、増田選手は約300万円を賭けたが、いずれも収支はマイナスだったという。
警視庁は今年5月、両選手を**賭博罪(刑法第185条)**の疑いで書類送検していた。
刑法では、「賭博をした者は、50万円以下の罰金又は科料に処する」と規定されており、賭け金の多少やオンラインか実地かは問わない。重要なのは、日本国内にいる状態で賭博行為を行ったかどうかだ。
▪️起訴されなかった理由とは
今回の不起訴について、法曹関係者はこう分析する。
「初犯であること、収益を得ていないこと、反省の態度が見られることなどを考慮して、起訴猶予となった可能性が高い。だが、これは違法性がなかったという意味ではない」
つまり、「違法だが、裁判での訴追に値しない」と判断されただけで、法的に問題がないわけではない。
また、オンラインカジノについては現在、国内での立件が難航している現状もある。理由の一つは、運営サーバーが海外にあるため、捜査当局が摘発や差し押さえをする法的手段が限られる点にある。
▪️犯罪組織の資金源にも
オンラインカジノは一部で「合法グレー」と誤認されがちだが、実態はより深刻だ。
警察庁によると、こうしたサイトは反社会的勢力や海外犯罪組織の資金源になっているケースも多く、利用者が知らぬ間に犯罪に加担してしまうリスクも指摘されている。
近年、スマートフォンひとつでアクセスできる手軽さから、オンラインカジノの利用者は急増。だがその実態は、法的リスクと依存症の温床という二重の問題を孕んでいる。
一度の利用が大きな損失を生み、生活破綻や違法行為へとつながるケースも後を絶たない。
▪️今求められるのは「法整備」と「認識改革」
今回のように著名人が関与し、不起訴となったことで、
一般社会に誤ったメッセージが広がることが懸念される。
海外サーバーで運営されていようとも、日本国内からアクセスし賭博を行えば、それは原則として違法行為である――。その認識が社会全体に必要とされている。
また、政府や国会には早急な法整備と、国民への啓発が求められている。今この瞬間も、法の目をかいくぐった「カジノ」が、誰かのスマホの中で稼働している。