UFC “MMA史上最強”ジョン・ジョーンズ遂に引退表明 激動のキャリアに幕「新たな挑戦にワクワクしている」

2025.6.22

UFCの象徴的存在が静かにグローブを置いた。

【©️Jon Jones】

 

米総合格闘技団体UFCのヘビー級王者ジョン・ジョーンズ(37=米国)が6月21日、現役引退を表明。UFC史上最年少王者にして、最も賛否を呼んだファイターのひとりが、激動のキャリアに自ら幕を引いた。

 

▪️熟考の末に下した決断「MMAはこれからも私の一部」

ジョーンズは自身のSNSに「本日、UFCからの引退を正式に発表します」と投稿。「この数年間の道のりに心から感謝しています」と綴ったうえで、「新たな機会と挑戦を楽しみにしている。MMAはこれからも私の一部」と、今後も格闘技界との関わりを示唆した。

UFCのダナ・ホワイト代表も、アゼルバイジャンで行われた大会後の記者会見でジョーンズの引退を認め、「20日に直接電話で意思を告げられた」と明かした。これに伴い、暫定ヘビー級王者のトム・アスピナル(32=英国)は正規王者に昇格する見通しとなった。

 

▪️UFCの“顔役”だった男 史上最年少王者からヘビー級制覇まで

ジョーンズは米ニューヨーク州ロチェスター出身。2008年、20歳でプロ総合格闘技デビューを果たすと、わずか3年後の2011年3月、23歳8カ月でUFC世界ライトヘビー級王者に輝いた。これは現在も破られていないUFC最年少戴冠記録である。

その後は長らくライトヘビー級の絶対王者として君臨し、破格のリーチと打撃精度、そしてレスリング力を武器に無敗街道を突き進んだ。2023年にはヘビー級でも王座を獲得し、2階級制覇を達成。その実力は「MMA史上最強」の評価を受けるに十分だった。

 

▪️輝きの裏で絶えなかったスキャンダルと波乱

ただし、ジョーンズのキャリアは決して栄光一色ではない。複数のドーピング違反、暴行事件、飲酒運転による事故、警察車両の破壊など、度重なる問題行動がキャリアに影を落とした。2017年には一度王座を剥奪され、出場停止処分も受けた。

それでも、試合になれば圧倒的な強さを見せつける――そんな“善と悪の二面性”が、彼を伝説に押し上げた要因でもある。

▪️UFCの歩みとジョーンズの位置づけ

1993年にアメリカで誕生したUFC(Ultimate Fighting Championship)は、当初はルールも安全性も整備されておらず、“何でもあり”の見世物的扱いだった。だが2001年、ズッファ社による買収とルール整備を経て、競技としての総合格闘技(MMA)は進化。やがて、全米スポーツ界で最も成長速度の速い競技へと変貌を遂げる。

その中でジョーンズは、2000年代後半から2010年代にかけてUFCの中心に立ち続けた。コンスタントな勝利、並外れたスキル、そして何よりも“圧倒的な存在感”は、UFCを世界最大の格闘技団体に押し上げる推進力の一つとなった。

引退表明の中でジョーンズは、「このスポーツに新しい形で貢献し、人々に刺激を与え続けたい」と記している。解説者、トレーナー、あるいはプロモーター―その次なる舞台は明かされていないが、“MMAの顔”として生きた男の存在は、今後も格闘技界に強い影響を与え続けるはずだ