第67回グラミー賞授賞式で遂に「年間最優秀アルバム賞」を受賞したビヨンセ!!

2025.2.3

カントリーのルーツをたどると黒人音楽の影響は大きい

▪️グラミー賞の歴史を塗り替えた夜

2025年2月3日(日本時間)に

ロサンゼルスのクリプト・ドットコム・アリーナで開催された

「第67回グラミー賞授賞式」。

世界最高峰の音楽賞として知られるこのイベントで、

ついにビヨンセが主要部門の一つである

「年間最優秀アルバム賞」を受賞した。

これまでに4度ノミネートされながらも

惜しくも受賞を逃してきたビヨンセ。

2017年の授賞式では、当時「年間最優秀アルバム賞」を獲得したアデルが、

受賞スピーチの中で涙を流しながら

「この賞は本来ビヨンセのものだった」と発言し大きな話題となった。

グラミー賞における人種的な偏りを指摘する声も強まり、

「白すぎるグラミー」との批判が年々高まる中、

今回のビヨンセの受賞は象徴的な意味を持つ。

受賞の瞬間、会場は総立ちとなり、大きな歓声に包まれた。

登壇したビヨンセは、音楽業界の変革を示すようなメッセージを期待されていたが、

彼女が語ったのは「山火事で作業にあたったロサンゼルスの消防隊員への賛辞」のみ。

静かに、しかし深い意味を持つスピーチだった。

▪️カントリー・ミュージックと黒人アーティストの関係

今回、ビヨンセがグラミーを獲得したのは、

彼女が発表したカントリー・アルバム『COWBOY CARTER』。

この作品は音楽ファンや評論家から絶賛され、

グラミー賞では11部門にノミネートされた。

『COWBOY CARTER』は、

アメリカのカントリーミュージックの歴史に新たな1ページを刻んだ作品だ。

ビルボードのカントリー・アルバムチャートで1位を獲得し、

このチャートが1964年に始まって以来、

アフリカ系女性アーティストがトップに立ったのは史上初の快挙となった。

また、ビルボードの総合アルバムチャート(オールジャンル)でも初登場1位を記録。

これにより、ビヨンセは8作連続で全米1位を獲得する偉業を達成した。

 

カントリー・ミュージックのルーツをたどると、

実は黒人音楽の影響が大きい。

19世紀、アメリカ南部では黒人と白人の音楽文化が交差し、

ブルースやフォークの要素を取り入れたカントリーミュージックが生まれた。

しかし、レコード業界のマーケティング戦略により、

カントリーは白人の音楽として確立され、

長らく黒人アーティストの活躍の場が限られていた。

ビヨンセ自身も、アルバム発売時に

「数年後にはアーティストの人種と音楽のジャンルが

関係なく語られる世の中になることを願っています」と語っていた。

カントリー・ミュージック界での

黒人アーティストの立場を問い直すきっかけとなる作品として、

彼女のアルバムは大きな影響を与えている。

▪️テイラー・スウィフトからのトロフィー受け渡し、歴史的瞬間の象徴に

また、「最優秀カントリー・アルバム」部門でもビヨンセは受賞を果たした。

この賞を受け取る際、トロフィーを手渡したのは、

同じくカントリー出身のスーパースター、テイラー・スウィフト。

カントリーからポップへと転向し、

音楽業界の垣根を越えて成功を収めたスウィフトとの

この瞬間は、歴史的な意味を持つ象徴的な場面となった。

スピーチでビヨンセはこう語った。

「ジャンルとは、表現者をひとつの檻に閉じ込めることでもあります。

しかし、自分のスタイル、自分の情熱を持ち続けることが大切です。」

カントリーミュージックは白人アーティストが主流のジャンルであり、

ビヨンセの受賞はそれを打ち破るものとなった。

多様性を求める声が強まる音楽業界の中で、

彼女の存在が示すメッセージは大きい。

▪️黒人カントリー・シンガーたちの反応と、今後の展望

ビヨンセの快挙を、アフリカ系のカントリーシンガーたちもポジティブに受け止めている。カントリーミュージック界で長年活躍してきたミッキー・ガイトンは、

昨年(2024年)4月のカントリー音楽の祭典で、

ビヨンセのアルバムについて次のようにコメントしていた。

「このアルバムの成功をきっかけに、

カントリーにおける黒人アーティストたちの状況が好転することを望んでいる。

今後の様子を見守りたい。」

さらに、ガイトンは音楽業界における多様性の課題についても言及し、

「DEI(多様性、公平性、包括性)に関する多くの委員会が閉鎖されつつある。

しかし、ビヨンセのこのアルバムによって会話が続くことを祈っている。」と語った。

▪️2025年、音楽のジャンルを超えた革命が始まる

今回のグラミー賞「年間最優秀アルバム賞」の受賞は、

単なる音楽の評価にとどまらない。

ビヨンセがカントリーミュージックという白人主流のジャンルに挑戦し、

その頂点に立ったことは、音楽業界における固定概念の崩壊を象徴している。

ジャンルの壁を超え、人種による音楽の分類がなくなる未来へ。

2025年、ビヨンセの受賞は**「音楽はすべての人のものである」

というメッセージを強く発信した夜となった。