伊藤詩織監督がアカデミー賞に歴史的ノミネート　

初監督作「Black Box Diaries」が世界に響く声

【配給元 株式会社スターサンズ公式サイトより】

 

第97回米アカデミー賞のノミネート作品が1月23日に発表され、

ジャーナリストの伊藤詩織さん（35）が

初めて監督を務めたドキュメンタリー映画『Black Box Diaries』が、

長編ドキュメンタリー映画賞にノミネートされた。

日本人監督による同部門でのノミネートは史上初の快挙となる。

『Black Box Diaries』は、

伊藤監督が自身の経験を基に、

2015年4月に元テレビ局員の男性から受けた

性的暴行被害を6年間にわたり調査・記録した作品。

このドキュメンタリーは、性暴力被害の実態や、

それを取り巻く社会の問題に鋭く切り込み、

多くの視聴者から共感を得ている。

 

伊藤監督のコメント「すべてのサバイバーに希望を」

アカデミー賞ノミネート発表の翌日、伊藤監督はコメントを発表。

「このノミネーションは、1つの大きな壁を乗り越える出来事となりました。

性暴力のサバイバーとして、また権力によって沈黙を強いられている

すべての人に希望をもたらすものだと思います」と語り、

その意義を強調した。

また、「この作品は私個人の物語にとどまりません。

声を奪われてきた人々、

そして今も声を上げ続けているすべての方々に、

この瞬間を捧げます」と述べ、

支援者や同じ苦しみを抱える人々へ強いメッセージを残している。

授賞式は3月2日、ロサンゼルスのドルビー・シアターで開催される。

 

世界中で高い評価を受ける『Black Box Diaries』

『Black Box Diaries』は、2024年1月にサンダンス映画祭で上映されて以来、

50以上の映画祭で上映され、これまでに18の賞を受賞。

また、30を超える国と地域での配給も決定。

さらに、伊藤監督は“ドキュメンタリー界の

アカデミー賞”とも呼ばれるIDAドキュメンタリー賞で新人監督賞を受賞している。

加えて、EU議会や英国議会、

国連の会議などでもこの作品を題材に講演を行うなど、

世界的に注目作品。

 

英国アカデミー賞でも59年ぶりの日本人監督ノミネート

『Black Box Diaries』は、

英国アカデミー賞（BAFTA）のドキュメンタリー賞にもノミネートされている。

日本人監督による同賞のノミネートは、

市川崑監督の『東京オリンピック』（1966年）以来59年ぶりとなる。

結果は現地時間2月16日に発表される予定。

 

伊藤監督の性被害と裁判の経緯

伊藤監督は2013年、米国の大学在学中に元テレビ局員の男性と知り合い、

2015年4月に会食した際、性的暴行を受けたと主張。

男性は合意の上の行為と反論し、

東京地検は嫌疑不十分で不起訴処分とした。

伊藤監督は民事裁判を起こし、2019年に勝訴。

最高裁も2022年に男性に約332万円の賠償を命じる判決を下している。

また、伊藤監督はSNSでの

誹謗中傷や名誉毀損を巡る裁判にも取り組み、

いずれも勝訴。

これらの活動を通じて、

被害者の声を社会に届ける重要性を訴え続けている。

 

伊藤監督が示した新たな道

『Black Box Diaries』は、個人の痛みを超えて、

社会に変革を求めるメッセージを発信する作品。

その世界的な成功は、被害者の声が力を持ち、

社会に影響を与える可能性を示している。

伊藤監督の挑戦は、これからの世代にとっても希望となるはずだ。

【文：高須基一朗】