フジテレビ「FNS歌謡祭 春」放送中止の舞台裏ー広告収入の大幅減とスポンサーの影響

2025.2.1

【2024年12月4日と11日放送『FNS歌謡祭』フジテレビ公式サイトより】

 

フジテレビが4月9日に予定していた音楽特番「FNS歌謡祭 春」の放送を中止することが、1月31日に明らかになった。同番組はフジテレビを代表する音楽特番の一つで、長年にわたって多くのアーティストや視聴者に親しまれてきた。しかし、今回の突然の放送中止には、同局が直面している深刻な経営問題が背景にあるようだ。

 

▪️経営の苦境と広告収入の大幅減少

関係者によると、今回の決定の最大の要因は、広告収入の大幅な減少にある。元SMAPの中居正広氏(52)に関する女性トラブル問題が報じられた影響で、スポンサー企業が広告出稿を見合わせる動きが広がり、結果的にフジテレビの経営に深刻な打撃を与えている。関係先には「今は企業体力がない」と説明されており、制作費を確保できなかったことが中止の主な理由とされている。

フジ・メディア・ホールディングス(HD)は、1月30日に発表した2025年3月期連結決算の業績予想を下方修正。広告収入は当初の見込みよりも233億円の減少が見込まれ、企業全体の経営状況が厳しさを増していることが浮き彫りになった。

 

▪️「FNS歌謡祭 春」─ 1974年から続く音楽特番の歴史

「FNS歌謡祭」は1974年にスタートし、長年にわたり音楽番組の定番として親しまれてきた。特に年末に放送される「FNS歌謡祭 冬」は、豪華なアーティストが集結する一大イベントとして定着している。

2002年から2014年まで同番組の制作を担当し、昨年末に引責辞任した港浩一前社長(72)も、番組の成功に大きく貢献した人物の一人だ。2012年からは「FNS歌謡祭 夏」も放送されるようになり、2016年には「春」も加わる形で年3回の特番として展開されてきた。今回放送予定だった「春」は、2022年以来の復活となるはずだったが、それが叶わなかった。

 

▪️制作費とスポンサーの影響

音楽特番の制作には多額の費用がかかるとされ、「FNS歌謡祭 春」も例外ではない。番組制作関係者によると、「春版の制作費は5000万~7000万円ほどかかるのではないか」と推測される。これは連続ドラマ1話の制作費(約3000万円)と比較すると、コスト面での負担が大きいことがわかる。

さらに、今回の放送中止には、番組のテーマがスポンサー企業の支持を得られなかったという側面もある。「アオハル(青春)ウイーク」として、若者向けの音楽番組を中心にした特番が企画されていたが、広告代理店関係者は「この企画自体が前社長の港氏の肝いりだったため、スポンサーの賛同を得られにくかったのではないか」と指摘している。

 

▪️音楽業界への影響と「夏版」への期待

音楽業界にとって、「FNS歌謡祭 春」は重要な意味を持つ特番だった。冬の放送ではベテランアーティストが中心となる一方で、「春」や「夏」は若手アーティストにとって貴重な出演機会となっていた。広告代理店関係者も、「若手アーティストのプロモーションにおいて重要な場だっただけに、中止を惜しむ声は多い」と話す。

現在の状況が続けば、7月上旬に予定されている「FNS歌謡祭 夏」も開催が危ぶまれる状況だという。番組担当者は「こちらもできるかどうか…」と関係先に説明しており、今後の動向が注目される。

ある広告代理店関係者は、「フジテレビの多くの社員は今回の問題に全く関係がない。視聴者も音楽を純粋に楽しみたいだけだ。経営陣の早期刷新が進み、番組がこれまで通り放送されることを願っている」と語った。

 

▪️フジテレビの公式見解

今回の放送中止について、フジテレビは新聞媒体の取材に対して、

「改編の詳細についてはお答えしておりません」とコメントするにとどまった。

スポンサー問題や広告収入の落ち込みが今後の番組制作にどのような影響を与えるのか、

引き続き注目される。