松田元氏が描く格闘技界の新たな未来 RIZIN冠協賛 世界王者クロフォード氏との国際事業 鈴木千裕選手との対談に注目

2026.10.21

世界の格闘技ビジネスに新たな可能性を切り開こうとする人物がいる。

abc株式会社の代表取締役を務める松田元氏だ。

国内最高峰の総合格闘技イベント「RIZIN」への継続的な協賛をはじめ、ボクシングの元世界5階級制覇王者テレンス・クロフォード氏との合弁事業構想、格闘技コンテンツの国際展開など、松田氏が進める取り組みは多方面に広がっている。

2026年には、鈴木千裕選手との対談動画もインターネット上で公開された。

舞台となったのは、若者に人気の東京・渋谷ナイトクラブ「CLUB CAMELOT」。

格闘技の世界で戦う選手と、競技を支えるビジネスの側から新たな展開を目指す経営者が言葉を交わす企画として注目される。

大会への協賛にとどまらず、選手の魅力を発信し、映像やライブイベントを通じて格闘技の価値を広げようとする松田氏。その取り組みをたどると、格闘技界の発展に企業がどのような形で関われるのかというテーマが浮かび上がる。


 

▪️RIZINへの継続協賛から冠スポンサーへ 大会を支える企業の存在感

松田氏が率いるabc株式会社は、RIZINとの連携を今年に入りかなり深めてきた。

同社の公表によると、2025年の「RIZIN.50香川大会」などを皮切りに、「RIZIN男祭り」「超RIZIN.4 真夏の喧嘩祭り」をはじめとする複数の大会を協賛・サポート。2026年には「RIZIN LANDMARK 14 in SENDAI」「abc presents RIZIN LANDMARK 15 in HIROSHIMA」にも関わっている。

広島大会より同社が冠協賛を務め、大会名に企業名が掲げられた。

これは、単に広告枠を購入するだけでなく、

大会と企業ブランドの接点をより明確にする取り組みといえる。

これをきっかけに、熊本大会、千葉大会も同様に冠スポンサーで協力体制を組んでいる。

格闘技の興行は、選手の実力や試合の魅力だけで成り立つものではない。大会を運営する組織、会場、配信、宣伝、スポンサーなど、多くの関係者が力を合わせることで、ファンが熱狂できる舞台が生まれる。

スポンサー企業が継続的に支援することは、競技を取り巻く事業環境を支える重要な要素だ。

とりわけ、複数の大会への協賛を重ねたうえで冠協賛へと関与を深めた点は、abc株式会社が格闘技を企業活動の一つの重要領域として位置付けていることを示してた。

 

▪️世界的な実績と知名度をもつクロフォード氏と提携 日本からアジア、そして世界へ

松田氏の事業展開で、特に大きな意味を持つのが、

ボクシング界の世界的スター、テレンス・クロフォード氏との提携だ。

abc株式会社は2026年5月14日、クロフォード氏との共同出資による合弁会社「Crawford Production Japan(仮称)」の設立に向けた基本合意を発表した。

クロフォード氏は、世界のボクシング界で卓越した実績を残した元プロボクサーだ。

5階級制覇を達成し、主要4団体の王座統一も複数階級で成し遂げた。

世界最高峰の舞台で培った競技経験に加え、

米国の格闘技エンターテインメント業界における強い人脈とネットワークも持つ。

そのクロフォード氏と日本企業が協力し、

日本からアジア市場へ向けた新たな格闘技エンターテインメント事業を構築しようとしている。

同社が発表した構想には、米国型の興行・配信ノウハウの導入、世界的な選手と日本の才能を結ぶネットワークづくり、格闘技の枠を超えたエンターテインメントIPの創出などが盛り込まれている。

これは、試合を開催するだけでなく、選手や競技の魅力を映像、配信、イベント、ライセンスなどに展開し、長期的な価値を生み出そうとする考え方だ。

日本の格闘技には、世界に発信できる選手や独自の競技文化がある。一方で、海外市場への進出や国際的なコンテンツ展開には、資金、制作体制、流通網、プロモーションなど、さまざまな要素が必要になる。

世界的な実績を持つクロフォード氏と、日本市場を基盤とするabc株式会社が手を組むことは、こうした課題に向き合うための一つの挑戦だ。

もちろん、合弁事業の構想が実際にどのような成果を生むかは、今後の事業運営によって明らかになる。それでも、世界のトップレベルで活躍した人物とともに国際展開を目指す姿勢は、日本の格闘技ビジネスに新たな選択肢をもたらす可能性がある。


 

▪️CPJ STUDIOSが目指すもの 選手の魅力をコンテンツに変える

クロフォード氏との提携構想は、メディアやライブイベントの分野にも広がっている。

abc株式会社は2026年6月、Crawford Production Japanの事業構想に関連するメディア・ライブイベント事業「CPJ STUDIOS」の開始を発表した。

同事業では、ファイターや競技の魅力を映像コンテンツなどに展開し、ファン層の拡大やスポンサー価値の創出につなげることを目指している。将来的には、IP展開、ライブイベント、ライセンス事業などへの発展も視野に入れている。

格闘家の価値は、試合の勝敗だけでは測れない。日々のトレーニング、試合に臨む姿勢、競技にかける思い、個性、ファンとの交流など、映像やインタビューを通じて伝えられる魅力は数多くある。

選手の人間的な魅力を継続的に発信できれば、試合当日だけでなく、日常的にファンとの接点をつくることができる。さらに、そのコンテンツを国内外の配信やイベント、スポンサー施策へとつなげられれば、競技そのものの認知拡大にも寄与する可能性がある。

松田氏が進める事業の特徴は、格闘技を単独の興行として見るのではなく、選手、映像、ファン、企業を結び付けるコンテンツビジネスとして捉えている点にある。

RIZINへの協賛とCPJ STUDIOSの展開を連動させる考え方も、その一環だ。大会の熱気を一度きりの体験で終わらせず、選手の魅力や競技の価値を継続的に発信する仕組みをつくることができれば、格闘技界全体にとっても新しい可能性が生まれる。

 

渋谷・CLUB CAMELOTで鈴木千裕選手と対談 競技とビジネスをつなぐ発信

こうした事業展開と並んで注目したいのが、松田氏と鈴木千裕選手による対談動画だ。



動画はYouTubeで公開されている。


対談の舞台となったのは、若者に人気のある東京・渋谷のCLUB CAMELOT。

クラブという空間を活用した対談形式の取材は、

一般的な記者会見や競技会場でのインタビューとは異なる独特の雰囲気を持つ。

鈴木選手は、リングやケージの中で結果を求められる格闘家だ。一方、松田氏は、企業経営やスポンサーシップ、格闘技関連事業の構築を通じて競技を支える側に立つ。

立場の異なる2人が同じ場で言葉を交わすことには、

競技の現場とビジネスの視点をつなぐ意味がある。

格闘技を発展させるには、選手が強くなることや大会の規模を大きくすることに加え、その魅力をどう伝え、ファンを増やし、競技に関わる人々へ新たな機会を生み出すかという視点も欠かせない。

本誌編集部としても、今回の対談を単なる著名人同士の交流として捉えるのではなく、格闘技を取り巻く発信や事業展開という観点から注目したい。出演者の言葉を伝える際には、発言の前後関係や企画の背景を踏まえ、読者にとって意味のある情報として整理することが重要になる。

動画の公開は、会場に足を運べなかったファンにも、2人の対話に触れる機会を提供する。格闘技ファンにとっては選手の競技外の一面を知る機会となり、ビジネスに関心を持つ視聴者にとっては、スポーツと企業活動がどのように結び付くのかを考えるきっかけにもなる。

なお、動画内の具体的な発言や、取材当日の詳細なやり取りについては、映像内容のネタバレ要素を含むため記事掲載はさしひかえる。

 

▪️格闘技界の発展に向けた挑戦 支える側から価値を生み出す側へ

松田氏とabc株式会社の取り組みをたどると、RIZINへの協賛、クロフォード氏との国際事業、CPJ STUDIOSによるメディア展開、そして鈴木選手との対談という複数の動きが、一つの方向性につながっていることが見えてくる。

それは、日本格闘技界を支えるだけでなく、その魅力をより多くの人へ届け、

選手や競技が持つ価値を新たな事業へと結び付けていこうとする姿勢だ。

スポーツの発展には、選手の努力や主催者の情熱に加え、長期的な視点で競技を支える企業の存在が欠かせない。継続的な協賛によって大会を支え、世界的なネットワークを活用して国際展開を目指し、映像やイベントを通じて選手の魅力を発信する。こうした取り組みが実を結べば、競技の認知拡大だけでなく、選手の活動機会やファンとの接点を増やすことにもつながる。

松田氏が進める挑戦は、格闘技を競技として楽しむ人々だけでなく、エンターテインメントやコンテンツビジネスに関わる人々にとっても学ぶべき点も多い。


【文:高須基一朗】