亀田和毅選手が58年ぶりの歴史に挑む ラスベガスで3階級制覇へ「簡単には終われへん」

2026.10.8

プロボクシング元世界2階級王者の亀田和毅選手が、

キャリア最大級の一戦を迎える。

WBA世界フェザー級3位の亀田選手は、10月18日(日本時間)、米ラスベガスで王者ブランドン・フィゲロア選手に挑戦する。勝てば自身初の3階級制覇。さらに、日本人として1968年の西城正三氏以来となるWBA世界フェザー級王座獲得という、58年ぶりの記録に到達する。

35歳で迎える敵地での世界戦。そこには、かつて大きな注目を集めた「亀田家」の現在と、長いキャリアを歩んできた亀田選手自身の覚悟も重なっている。


 

▪️約1年5カ月ぶりの世界戦 8カ月に及ぶ交渉を経て実現

亀田選手は7月30日にメキシコ入りし、ラスベガス決戦に向けて最終調整を続けている。

試合が決まるまでの道のりは決して平坦ではなかった。

今年1月ごろから世界戦の交渉を進めていたものの、話がまとまりかけては流れる状況が続いたという。それでも「いつ決まってもいいように」とトレーニングを継続。約8カ月にわたって世界戦を待ち続け、ようやくフィゲロア選手との一戦が決まった。

最後にリングへ上がったのは2025年5月24日。

インテックス大阪で行われたIBF世界フェザー級タイトルマッチでアンジェロ・レオ選手に挑戦し、0-2の判定で敗れている。

今回は、それ以来となる世界戦だ。

「去年は1試合。しかも1年5カ月も試合ができていない。ただでさえハードルの高い挑戦です」

そう語りながらも、亀田選手は悲観する様子を見せない。

「山は高いほど、登りがいがある」

そう言い切り、ベルトを日本へ持ち帰る決意を示している。

 

▪️相手はネリを破ったフィゲロア「手数」と圧力が武器

立ちはだかるフィゲロア選手は、決して容易な相手ではない。

スーパーバンタム級時代にはルイス・ネリ選手と対戦し、2021年に7回KO勝ち。ネリ選手にプロ初黒星をつけた実績を持つ。

亀田選手より身長で4センチ、リーチでは14センチ上回るサイズも特徴だ。

さらに、試合中に左右の構えを頻繁に入れ替えながら前へ出て、豊富な手数で相手を追い込むスタイルを持つ。

一方の亀田選手は、これまで培ってきたスピードと技術、そして試合全体を組み立てる力で対抗する構えだ。

元2階級制覇王者の兄・大毅氏は自身のYouTubeで、弟について「スピードもスタミナもある」と評価する一方、フィゲロア選手のパワーを警戒し、後半でのTKO決着を予想している。

身内だからこそ知る亀田選手の強さと、対戦相手の難しさ。その両方を踏まえた厳しい見立てだ。

 

▪️「12ラウンドを考えて戦う」亀田和毅が描くフルラウンド決着

では、本人はどんな試合を想定しているのか。

亀田選手は、最初から一つのパターンに固執するのではなく、リング上で相手の反応を見ながら戦い方を変えていく考えを示した。

「1つ通じなかったら、次はこれが、あれが通じるか。いろんなパターンを考えながら、状況をよく見ながら試合を進めることになりそう」

フィゲロア選手はこれまで一度もKO負けを喫していない。

だからこそ亀田選手が描くのは、一瞬の勝負ではなく12ラウンドを使った総力戦だ。

「12Rちゃんと考えて戦わないといけないでしょうね。根比べ、根性と根性の勝負になるかもしれません」

そして最後にこう続けた。

「持っているもの全部、フルラウンドかけてぶっつけますよ」

KOだけを狙うのではなく、12ラウンドを通して勝機を積み上げる。35歳のベテランが選んだのは、そんな戦い方だ。

勝てば西城正三氏以来58年ぶり「やっておけばよかった」と後悔しないために

今回の世界戦には、個人記録を超えた歴史的な意味もある。

日本人によるWBA世界フェザー級王座獲得は、1968年9月27日に西城正三氏が米ロサンゼルスでラウル・ロハス選手を判定で破って以来、途絶えている。

亀田選手がラスベガスでベルトを奪えば、それ以来58年ぶりとなる。

「価値ある王座です。挑戦してアカンかったらしゃあない。やっておけばよかったと後悔するより、挑戦して良かったと思える世界戦にしたい」

35歳で迎える今回の挑戦には、これまで積み重ねてきた19年間のキャリアも凝縮されている。

 

▪️亀田家の世界王者誕生から20年 兄弟それぞれの道へ

2026年は、亀田家にとっても節目の年になる。

2006年8月、長男の興毅氏がWBA世界ライトフライ級王座を獲得してから20年。

そこから興毅氏、大毅氏、そして和毅選手と、それぞれが世界の舞台を経験してきた。

現在、兄2人は現役を退き、それぞれ別の道を歩んでいる。

「昔、1つ屋根の下でべったりしていたことを振り返ると懐かしいです」

かつて大きな注目を集めた一家も、20年という時間の中で形を変えた。

それでも亀田選手は、日本ボクシング界の盛り上がりについて触れながら、自身もその一端を担いたいという思いを語っている。

「いまは井上チャンピオンを筆頭に、たくさんの実力あるボクサーたちが日本のボクシングを盛り上げてくれている。俺もそこに貢献したい」

かつての「亀田家」の物語ではなく、一人のボクサーとして新たなページを開こうとしている。

 

▪️ラスベガスに来るのは妻と2人の息子 父と兄2人は日本から見守る

今回の大一番を現地で見届ける家族にも変化がある。

父の史郎氏、兄の興毅氏、大毅氏がラスベガスを訪れる予定はなく、現地で応援するのはメキシコ人の妻シルセさんと、長男の望有くん、次男の有里くんだ。

亀田選手は家族について「みんなそれぞれの道を歩んでいますからね。仲は良いですよ」と話している。

試合前には、妻と2人の息子との時間が大きな支えになっている。

長男の望有くんはキッズモデルとしても活動しており、亀田選手によればダンスも得意だという。

「入場で踊ってもらいますよ。ダンス、めちゃうまいですから!」

家族4人で迎えるラスベガスの大舞台。

そのリングの先には、3階級制覇と58年ぶりの歴史が待っている。

 

▪️「毎回が最後のチャンス」35歳まだ終わらない

プロ19年目。

35歳という年齢もあり、亀田選手はここ数年、常に「最後」を意識しながらリングに立ってきた。

今回もその覚悟は変わらない。

「毎回が最後のチャンスと思ってリングに上がっていますよ」

そして、長いキャリアを振り返るように、最後に自らの現在をこう表現した。

「正直、みなさん、まだしぶとく残っていると思っているでしょうね。はよ、おわってくれと。でも、簡単には終われへん」

ラスベガスで迎える世界戦は、単なる3階級制覇への挑戦ではない。

長いキャリアの集大成であり、亀田家の20年という時間の先にある新たな挑戦でもある。


【文:高須基一朗 瞬刊モッツ 編集部】