「八代亜紀さんの尊厳を守れ」― “私的写真”封入ベスト盤に広がる波紋、ファンの怒りと疑問の声
演歌界のレジェンド、八代亜紀さん(享年73)がこの世を去ってから4カ月。今、X(旧Twitter)を中心に《#八代亜紀さんの尊厳を守れ》というハッシュタグが急速に拡散している。きっかけは、4月21日に発売予定のアルバム『八代亜紀 お宝シリーズ 第一弾 忘れないでね』。
演歌ファンはもちろん、多くの音楽愛好者の期待を集めるはずだったこの作品が、現在、まったく別の形で注目を集めている。
というのも、このアルバムには「私的に撮影されたフルヌード写真」が“特典”として封入されると告知され、ファンや世間から非難の声が殺到しているのだ。
販売元である鹿児島の「ニューセンチュリーレコード」の公式サイトには、次のような一文が記載されている。
《八代亜紀が24~25歳の時に同棲していたT社のNディレクターによってポラロイドカメラで撮影されたフルヌード写真2枚が掲載されています 八代亜紀の初めてのヌード写真です》
この一文は、故人の尊厳や遺志に反しているのではないかとの疑念を呼び、多くの人々が声を上げる事態に発展した。
Xには、以下のような怒りや疑問の声が溢れている。
《こんな酷いこと、あってはならない。人としての道から外れている》 《ファンではないけれど、これは見過ごせない問題》 《敬愛されるべき存在の生前の功績を、こんな形で汚すのは許せない》
また、4月9日にはオンライン署名サイト「Change.org」で、「八代亜紀さんの尊厳を保護し、リベンジポルノを阻止する」と題した署名活動が開始された。発起人は次のように訴える。
「この現状はただのエンターテイメント以上のもので、故人の権利と尊厳を侵害しています」
アルバムの販売を取りやめるよう求める声は、急速に広がっている。
11日時点で、大手レコードショップ「タワーレコード」のオンラインサイトからは該当アルバムのページが削除。通販大手「Amazon」でも同様に閲覧できなくなっている。
一方で、販売元であるニューセンチュリーレコードは
10日にInstagramを更新し、
アルバム発売の継続を明言。報道内容に対し「業務妨害にあたる」と主張し、法的措置も視野に入れていることを明かした。
「どこのどなたのイヤガラセを受けようとも受けて立つ所存です」
とした上で、写真類の「所有権」を主張し、
「買い取り交渉も受ける」との姿勢を示した。
だが、ここで問われるべきは「権利」ではなく「敬意」だろう。
八代さんは生前、芸術と真摯に向き合い、
演歌に新たな風を吹き込み続けた稀有な存在だった。
その人生と表現に、今も多くのファンが心を寄せている。
たとえ所有権・肖像権の権利を含め、あったとしても、
それを公にすることが本当に「八代亜紀」という名の芸術家への敬意と呼べるのか。
八代亜紀さんの歌声は、これまでも、そしてこれからも、多くの人の心を支え続けるだろう。
その尊厳を守ることこそが、真の「ファン」であり、「業界」の矜持であるはずだ。