再び「日本の格闘技黄金期」をつくれるか―ONE Championshipが打ち出す新機軸「ONE SAMURAI」の本気度
アジア発の総合格闘技団体、ONE Championshipが、
日本市場に対して改めて“本腰”を入れる。
2月18日、都内で開催された「日本オリジナル新シリーズ発表会見」で、
会長兼CEOのチャトリ・シットヨートンが発表したのは、
新シリーズ「ONE SAMURAI」の始動だ。
第1回大会は4月29日。以降、毎月開催で年12回、
5年間で計60大会という中長期ロードマップが示された。
単発イベントではない。
継続性を前提とした“再建プロジェクト”である。
▪️「日本に名誉と栄光を」 30年の空白への問題提起
チャトリ氏の発言は、単なる大会告知の域を超えていた。
かつて日本では、格闘技がテレビのゴールデンタイムを席巻し、社会現象を巻き起こしていた。特にPRIDEやK-1が頂点にあった時代、格闘技はエンターテインメントの中心に位置していた。
だが、その熱狂から約30年。
市場規模は縮小し、地上波中継は減少し、スター不在が叫ばれる状況が続く。
チャトリ氏は「日本に再び名誉と栄光をもたらしたい」と語り、日本経済の停滞と格闘技業界の縮小を重ね合わせながら、「ヒーローをつくる」ことの必要性を強調した。
ここで注目すべきは、“競技振興”ではなく“物語創出”に言及した点だ。
ストーリーがあれば、人は熱狂する。
熱狂があれば、経済が動く。
これはスポーツビジネスの本質を突いた発想でもある。
▪️5年間で60大会を構想のリアリティ
年12回、5年で60回という数字は、日本の格闘技興行としては異例のスケールだ。
しかも「日本人選手が75%」という方針を掲げる。
日本人主体で構成し、スター候補を量産する。
そのための“母数”を確保するのが毎月開催という仕組みだ。
さらに注目すべきは契約形態だ。
新規参戦の日本人選手については独占契約にこだわらず、他団体との掛け持ち参戦も容認する姿勢を示した。
これは業界内の摩擦を最小限に抑え、市場全体を拡張するための現実的な戦略といえる。囲い込みではなく、ハブ機能を担う構想だ。
▪️武尊選手の“引退試合”が象徴するもの
当初「ONE175」として予定されていた大会は、「ONE SAMURAI.1」として開催される。
そこで予定されているのが、キックボクシング界のカリスマ、武尊選手の引退試合だ(正式発表は今後)。
もし実現すれば、象徴的な一夜になる。
一時代を築いたスターの終章を、新シリーズの幕開けに重ねる。
それは「継承」と「再生」を同時に演出する構図でもある。
スターの引退は終わりではなく、次世代へのバトンだ。
ONEが描くのは、その循環モデルだろう。
▪️日本市場は再浮上できるのか
とはいえ、理想と現実は別問題だ。
格闘技はコンテンツ過多の時代にある。
配信プラットフォームの競争、若年層の可処分時間の奪い合い、スポンサー環境の変化。単に大会数を増やせば成功する時代ではない。
3月末に予定される次回会見では、年間スケジュールやカード詳細が発表されるという。そこで示される具体性こそが、構想の実効性を測る試金石となる。
「ONE SAMURAI」は単なる日本ローカルシリーズではない。
それは、日本格闘技界へのメッセージでもある。

