なぜ人は集まったのか・・・渋谷で若者たちの足を止めた“ふみの”の歌声と、いまの音楽シーンが求めているもの

2026.1.27

1月25日の渋谷で 予告もなく始まった路上ライブに人が溢れた。
東京・渋谷ストリーム前の稲荷橋広場。

開始のわずか2時間前に告知されたサプライズ企画だったが、

気づけば観覧エリアは埋まり、周辺には長い列ができ、

入場規制が敷かれる事態となった。

歌っていたのは、「ふみの」。
ちゃんみなとBMSGが手がけたオーディション「No No Girls(通称:ノノガ)」の最終審査まで残り、今年1月にソロアーティストとしてデビューしたばかりの存在だ。

だが、この光景は単なる“新人の話題性”では説明しきれない。
そこには、いまの音楽シーン、そして若いリスナーが求めている価値観が、くっきりと浮かび上がっていた。


 

▪️「見せる音楽」から「立ち会う音楽」へ

「ふみの」の路上ライブは、アコースティックギター1本。
派手な照明も、煽りもない。披露されたのは未公開のデモ曲2曲と、デビュー曲『favorite song』のみだった。

それでも人は足を止め、耳を傾けた。
理由は明確だ。いまリスナーが求めているのは、完成された“商品”としての音楽よりも、「その場で鳴っている声」そのものだからだ。

SNSと配信が主戦場になった時代、音楽はいつでも、どこでも聴ける。
だからこそ逆説的に、「いま、ここでしか体験できない瞬間」に価値が生まれる。無料で、距離が近く、偶然立ち会えたという体験は、強烈な記憶として残る。

ちゃんみなが設立したレーベル「NO LABEL ARTISTS」が掲げるセルフプロデュースという思想も、その延長線上にある。
「ふみの」の歌い方が、あえて整いすぎていないように聞こえる瞬間があるのも、欠点ではなく“個性”として提示されている。

それは、完璧さよりも“実在感”が評価される時代の象徴だ。

 

▪️チャートと路上、その距離の近さ

デビュー曲『favorite song』は、Billboard JAPAN「JAPAN Hot 100」でトップ10入りを果たし、ミュージックビデオも急上昇1位を記録した。
数字だけを見れば、十分に「成功」と呼べる。

だが注目すべきは、その翌週に行われたのがホール公演ではなく、路上ライブだったという点だ。
ステージを高くするのではなく、地面に降りてくる選択。

その距離の近さこそが、現在のファンとの関係性を象徴している。

前日に公開されたアコースティックパフォーマンスビデオも同様だ。音を削ぎ落とすことで、歌詞と声の輪郭がより鮮明になった。

巨大なステージや華やかな演出は、依然として音楽の王道だ。
だが一方で、渋谷の片隅でギター1本を抱える歌い手に、これだけの人が集まる現実がある。

「ふみの」の路上ライブは、ひとりの新人アーティストの実話として、

スタートダッシュを切った記念すべき1日となった。