五輪金メダリストが東京ドームを制圧―ウルフアロン選手が柔道魂を胸にデビュー戦で失神決着の歴史的戴冠
東京ドームがどよめいた。いや、震えたと言っていい。
五輪金メダリストが、プロレスという異次元の戦場で、いきなり頂点に立った。
2021年東京五輪柔道男子100キロ級金メダリストのウルフアロン(29)が、1月5日、新日本プロレス最大の祭典「WRESTLE KINGDOM20」で衝撃のプロレスデビュー。NEVER無差別級王者EVILを相手に、柔道仕込みの三角締めで失神させ、レフェリーストップによるKO勝ちを収めた。
デビュー戦での王座奪取という異例中の異例。新日本の歴史に、新たな“怪物”の名が刻まれた瞬間だった。
舞台は超満員札止め4万6913人の東京ドーム。五輪の畳とはまるで違う、狂気と歓声が渦巻く空間に、ウルフは新人として足を踏み入れた。
しかし、リングに立ったその姿は、もはや新人のそれではなかった。
EVILの代名詞ともいえる凶器攻撃、場外乱闘、セコンド総出の反則三昧。プロレスの“闇”を一身に浴びながらも、ウルフは沈まなかった。怒りが臨界点に達した12分過ぎ、勝負は一瞬で決した。
逆十字で腕を極め、逃げ場を奪う。
そこから流れるように三角締め。
柔道の原理、身体操作、極めの精度―五輪王者の本質が、
リングの上で完全に解き放たれた。EVILは抵抗する術もなく失神。
レフェリーが試合を止めた。柔道は終わっていなかった。
場所を変え、形を変え、プロレスという表現に昇華されただけだった。
試合後、ベルトを腰に巻き、雄たけびを上げたウルフは、5万人近い観衆の大歓声を全身で受け止めた。
「今日、やっとプロレスラーになれた」。
その言葉は謙虚だったが、現実は残酷なほどに明白だ。
彼は、もう“ただの新人”ではない。日本の五輪金メダリストがプロレスに転向するのは史上初。それでも本人は驕らない。
「正直、今日の勝利はビギナーズラック」。
だが、その裏にあるのは、覚悟と自己否定を原動力にする強さだ。
金メダリストの肩書を捨て、丸刈りで新人としてリングに立つ選択。
柔道着を脱ぎ、黒いショートタイツで闘う決意。
すべては「プロレスラーとして生きる」ためだった。
棚橋弘至選手の引退試合という特別な夜に、新日本プロレスは“次の象徴”を手に入れたといっていいのだろう。 夢はIWGP世界ヘビー級王座であり、この夜は、通過点にすぎない。

