麻薬カルテルが支配する現実―元エクアドル代表選手が銃撃死、スポーツ界にも及ぶ深刻な治安悪化
南米エクアドルで、麻薬カルテルと犯罪組織がもたらす
治安悪化の現実が、また一つ痛ましい形で表面化した。
サッカー元エクアドル代表のマリオ・ピネイダ選手(33)が
17日、港湾都市グアヤキルで銃撃を受けて、その場で死亡した。
報道によると、ピネイダ選手は母親と女性同伴者とともにいたところを、
バイクに乗った二人組に襲撃され、銃弾を浴びたという。
白昼に近い時間帯での犯行とされ、無差別性と計画性が入り混じった犯行手口は、同国で横行する組織犯罪の特徴と重なる。
グアヤキルは現在、麻薬取引に関与するギャングが強い影響力を持つ都市として知られる。
港湾機能を背景に、コカイン密輸の中継拠点となり、抗争、報復、暗殺が後を絶たない。治安の悪化は一般市民にとどまらず、社会的知名度を持つスポーツ選手にも及んでいる。
ピネイダ選手が所属していたエクアドル1部リーグのバルセロナSCは、「グアヤキルで襲撃を受け死亡したとの正式な通知を受けた」と声明を発表したが、クラブの悲嘆はサッカー界全体の危機感を象徴している。
実際、エクアドルのサッカー界では異例の事件が続発している。
9月には2部リーグの選手3人が殺害され、そのうち1人はスポーツ賭博への関与が指摘された。10月にも別の選手が銃撃され負傷しており、選手が犯罪組織の標的となる構図が浮かび上がる。
エクアドルは、コロンビアとペルーという世界有数のコカイン生産国に挟まれ、国際的な密輸ルートの要衝となってきた。麻薬カルテルは港湾都市や流通網を足場に勢力を拡大し、治安機関の統制を超えた影響力を持ち始めている。
今回の銃撃事件は、単なる個人の不幸ではない。
麻薬カルテルが暗躍する国では、スポーツや文化といった領域も例外ではなく、暴力が日常のリスクとして存在するという厳しい現実を突きつけている。
元代表選手の命が奪われた事実は、エクアドル社会が直面する治安崩壊の深刻さを、世界に強く印象づける出来事となった。

