シルベスター・スタローン 肉体改造の裏側を80歳で告白 『ロッキー3』で体脂肪率2.6% ステロイド使用も認める「体を酷使してきた」
シルベスター・スタローンさんが、ハリウッドを代表する肉体派スターとして歩んできた半世紀を振り返り、映画のために追い込んだ肉体づくりの裏側を明かした。
米紙「The New York Times」のインタビューで、スタローンさんは『ロッキー3』(1982年)の撮影時、体脂肪率が2.6%まで落ちていたことを告白。さらに、その肉体を維持するためにステロイドを使用していたことも認めた。
今回の発言は、単なる過去の肉体改造に関する告白ではない。
スタローンさんは同じインタビューで、極端な肉体への執着から摂食障害にも陥ったこと、長年にわたって自分の身体を酷使してきたことを明かしている。
80歳を迎えた現在だからこそ語られた、ハリウッドの「肉体派スター」の知られざる代償だった。
▪️「あの体は・・・自然には作れない」本人がステロイド使用を認める
今回、海外メディアが特に注目したのが、スタローンさん自身によるステロイド使用の告白だ。
「The New York Times」のインタビューで、1980年代の肉体づくりについて質問されたスタローンさんは、ステロイドを使用していたことを認めた。
さらに、使用方法についても一定期間使用して休止する「6週間使用、6週間休止」というサイクルに触れている。
ただし、これはあくまでスタローンさん自身が過去について語った内容であり、現在の使用状況を示す発言ではない。
米国の医療情報サイト「MedlinePlus」によれば、アナボリック・ステロイドはテストステロンに似た作用を持つ合成物質で、医療目的で使用されるケースがある一方、筋肉増強などを目的とした不適切な使用には、心臓、肝臓、腎臓、血圧、コレステロールなどへの影響が指摘されている。
スタローンさん自身も今回のインタビューで、過去の肉体づくりについて「大きな代償を払った」という趣旨で振り返っている。
つまり今回の発言は、「ステロイドを使っていた」という事実だけを切り取るよりも、それほどまでに身体を作り込まなければならなかった時代の自身の生き方を、本人が現在の視点から見つめ直したという点に意味がある。
▪️『ロッキー3』で体脂肪率2.6% 肉体への執着が「摂食障害」に
さらに衝撃的なのが、『ロッキー3』撮影時の身体の状態だ。
スタローンさんによれば、当時の体脂肪率は2.6%まで低下していたという。
そして、その肉体を維持することへの執着が極端になり、食べたものを身体にとどめることができない、あるいは意図的にとどめたくない状態に陥ったと説明。「過食症になった」と本人が初めて明かした。
海外メディアでは、この告白を「bulimia(神経性過食症)」として報道している。米「TheWrap」や「E! News」なども、1982年の『ロッキー3』をめぐる肉体改造と摂食障害を今回のインタビューの主要なポイントとして報じた。
スタローンさんが語ったのは、単純なダイエットの失敗ではない。
本人の言葉から浮かび上がるのは、スクリーン上で完成された肉体を維持すること自体が目的になっていった過程だ。
「ロッキー」というキャラクターの身体を作ることが、いつしか自分自身の身体を管理し続けることと切り離せなくなっていた。
▪️「ロッキー」と「ランボー」では、目指す肉体そのものが違った
スタローンさんは今回、自身の肉体づくりについて興味深い説明もしている。
初期のロッキーは、必ずしも巨大な筋肉を持つ人物として描かれていたわけではない。
ところがシリーズが進むにつれ、ロッキー自身にスターとしての自意識が芽生え、より鍛えられた身体を求めるようになったという。
一方、「ランボー」では、さらに別の方向性を求めた。
海外報道によれば、スタローンさんはランボーについて、単純に大きな身体ではなく、野性的で攻撃的、なおかつ俊敏な肉体をイメージしていたと説明している。
その際、比較対象として名前が出てくるのがアーノルド・シュワルツェネッガーさんだ。
スタローンさんが目指したのは、シュワルツェネッガーさんのような巨大なボディービルダー型の肉体とは異なる、細く絞り込まれた「戦える身体」だった。
この違いは、1980年代のアクション映画におけるスターの身体表現を考えるうえでも興味深い。
単に筋肉量を増やすのではなく、キャラクターごとに身体そのものをデザインする。
それがスタローンさんにとっての肉体改造だった。
▪️映画のために作られた「役柄そのもの」
『ロッキー3』でスタローンさんがどこまで身体を追い込んでいたのかは、以前から海外でも語られてきた。
過去の「Muscle & Fitness」の記事をもとにした記録では、スタローンさんは同作で体重を約155ポンド(約70キロ)まで落とし、ランニング、ウエイトトレーニング、スパーリング、水泳などを組み合わせた非常に厳しいトレーニングを行っていたとされる。
今回の本人の告白によって、そうした肉体づくりの裏側に、単なるトレーニング量だけでは説明できない精神的なプレッシャーが存在していたことが改めて浮かび上がった。
スクリーンに映る数分間のファイトシーンや肉体美のために、俳優は撮影期間だけでなく、そのはるか前から身体を作り込む。
現代ではCGやスタントダブル、デジタル技術が映画制作を支えるが、スタローンさんがスターとして台頭した1980年代は、本人の身体そのものが作品の説得力を担っていた。
「ロッキー」や「ランボー」が世界的な人気を獲得した背景には、脚本や演技だけでなく、スタローンさん自身の身体がキャラクターを象徴する存在になっていたことも大きい。
▪️転機になった『コップランド』「最も弱い男」を演じたことで解放された
そんなスタローンさんにとって、大きな転機になった作品が1997年の『コップランド』だったという。
同作で演じたのは、それまでのアクションスター像とは大きく異なる人物だった。
海外報道によれば、スタローンさんは、身体的にも弱く、太った保安官を演じたことで、それまで自分に課してきた肉体的なプレッシャーから「解放された」と振り返っている。
これはスタローンさんのキャリアを考えるうえで、非常に象徴的な出来事だ。
『ロッキー』や『ランボー』では、強さを身体で表現する必要があった。
しかし『コップランド』では、むしろ「強そうに見えないこと」が役柄の重要な要素になった。
スターにとって、肉体は武器にもなる。
同時に、そのイメージを守り続けることが負担になる場合もある。
スタローンさんが『コップランド』を転機として挙げた背景には、長年にわたって「強い身体を持つスター」であり続けなければならなかった自身へのプレッシャーがあったと考えられる。
▪️80歳になった今もトレーニング しかし「代償」は残った
スタローンさんは現在も身体を鍛えることを続けている。
一方で、長年の撮影やトレーニング、スタントによって身体には大きな負担が残った。
本人は今回のインタビューで、背中の手術を9回、肩の手術を2回、首の固定術を3回受けたと説明している。
そして、自分の身体を「酷使してきた」と振り返り、もしやり直せるなら、すべてのスタントを自分で行うのではなく、誰かに任せていたかったという趣旨の後悔も語った。
それでも、80歳になった現在も身体を良い状態に保ちたいという思いは失っていない。
ここには、スタローンさんの人生を象徴するような矛盾がある。
身体を酷使したことを悔やみながら、身体を鍛えることそのものを手放してはいない。
むしろ、長年にわたって「身体を作ること」が俳優としてのアイデンティティーと結びついてきたからこそ、完全に切り離すことは難しいのだろう。
▪️回顧録『The Steps』で語られる「成功の裏側」
今回の告白は、新たな回顧録『The Steps』の発売に合わせたインタビューで明らかになった。
同書は2026年9月29日に米国で発売予定で、出版社の紹介では、スタローンさんが自身の生い立ちから俳優として成功するまでの道のりを振り返り、「ロッキー」の象徴ともなったフィラデルフィア美術館の階段をタイトルに重ねている。
海外で今回のインタビューが大きく取り上げられているのは、単に有名俳優が過去の薬物使用を告白したからではない。
『ロッキー』という作品によって世界的スターになった人物が、80歳という年齢になって、自らの成功を支えたものと、その代償を同時に語っているからだ。
筋肉、トレーニング、スタント、スターとしてのイメージ。
それらはスタローンさんにとって成功のための「武器」だった。
しかし、半世紀近くを経た現在、その武器が身体に残した傷についても本人が語り始めた。
▪️「強さ」の象徴だった男が語った、もう一つのロッキー
『ロッキー』シリーズでは、主人公が何度倒されても立ち上がる姿が繰り返し描かれてきた。
その主人公を演じたスタローンさん自身も、俳優としてのキャリアを通じて身体を鍛え、傷つき、それでもスクリーンに立ち続けてきた。
今回の告白は、そんなスタローンさんの人生そのものが、ある意味で「もう一つのロッキー」だったことを感じさせる。
ただし、今回本人が語ったのは、努力の美談だけではない。
肉体を極限まで追い込むことが、時として本人の健康や生活そのものを圧迫することもあった。
アナボリック・ステロイドの乱用については、米国のMedlinePlusやFDAも心血管系、肝臓、腎臓などへの深刻なリスクを注意喚起している。今回のスタローンさんの告白も、あくまで本人の過去の経験として受け止める必要があり、本人が語った使用方法を一般的な安全策とみなすことはできない。
華やかな映画の世界で作られた完璧な肉体。
その裏側には、本人にしか分からないほどの努力と代償があった。
80歳を迎えたスタローンさんがいま語っているのは、「どれだけ鍛えたか」だけではない。
そこまでして作った身体と、そこまでして守ったスター像を、自分はいまどう受け止めているのか。
『The Steps』は、その答えを本人自身の言葉で振り返る一冊だ。


