武尊選手の現役最後の引退試合が「暫定世界王座決定戦」に格上げされた理由―ONE Championshipが日本市場で仕掛ける新戦略「ONE SAMURAI」に期待値
【©️ONE Championship 】
4月29日に東京・有明アリーナで開催される新シリーズ「ONE SAMURAI」の旗揚げ大会で、元K-1三階級制覇王者・武尊選手と、ONEフライ級ムエタイ王者のロッタン・ジットムアンノンによる再戦が正式決定した。この一戦は単なるビッグマッチではない。両者の再戦はフライ級キックボクシング暫定世界王座決定戦として実施されることになり、さらに武尊にとっては現役最後の試合となる。
今回のカード発表は、単なる対戦決定以上に、ONE Championshipが日本市場に対して打ち出した新たな戦略の象徴とも言える内容となった。
■「ONE SAMURAI」旗揚げ戦に込められた日本再攻略の意図
ONE Championshipは2月27日、公式SNSなどを通じて4月29日の有明アリーナ大会を、従来予定されていたナンバーシリーズ「ONE175」から、新ブランド「ONE SAMURAI」旗揚げ戦へ変更すると発表した。
「ONE SAMURAI」は、MMA、ムエタイ、キックボクシング、サブミッショングラップリングを横断する総合格闘技イベントとして展開され、日本人スター選手と海外トップ選手を軸にシリーズ化される予定だ。
ONEは今後5年間で60大会の開催を計画しており、日本国内では動画配信サービスの
U-NEXT
が独占配信を行う。加入者1200万人規模のプラットフォームと組むことで、テレビ依存から脱却し、配信主体の興行モデルを確立する狙いがあると見られる。
格闘技団体にとって日本市場は依然として重要な収益源であり、今回のシリーズ創設は、かつてPRIDEやK-1が築いた巨大市場の再構築を視野に入れた動きとも言える。
■引退試合がタイトル戦になった異例の構図
武尊選手は2025年3月、さいたまスーパーアリーナでロッタンと対戦し、1ラウンド1分20秒KOで敗北。その後、同年11月大会でデニス・ピューリックにTKO勝利を収めた試合後、次戦での引退を電撃宣言していた。
その際に対戦相手として指名したのがロッタンであり、ロッタン側もこれを受諾。
CEOのチャトリ・シットヨートンも日本大会での再戦実現を明言していた。
しかし今回、単なる再戦ではなく暫定世界王座決定戦として組まれたことは極めて異例だ。
引退試合をタイトルマッチに設定することは通常の競技構造では例外的であり、そこには
・日本大会の話題性最大化
・武尊選手の世界的なブランド価値の最大利用
・ロッタンをキックボクシング王座戦線へ組み込む布石
といった複数の興行的意図が透けて見える。
■武尊選手「最後の日に全部ひっくり返す」
タイトル戦決定を受け、武尊は自身のSNSで次のように投稿した。
引退試合でロッタンと世界王座決定戦。
これ以上ない舞台を用意して頂きました。
格闘家としての最後の日に何が何でも勝って全部ひっくり返す。
2026年4月29日、「武尊」最後の日、最後の挑戦。絶対勝つ。
K-1時代から日本キック界を牽引してきたスターが、ONEのリングでキャリアを終えるという構図は、日本格闘技史の流れの変化を象徴する出来事でもある。
今回の「ONE SAMURAI」創設は、単なる新イベントではなく
⚫︎配信主体のビジネスモデル
⚫︎国際王座中心の競技構造
⚫︎日本スター×海外王者の対抗図式
という、従来の日本格闘技とは異なる興行設計の提示でもある。
引退試合がその旗揚げ戦に据えられたことは、
ONEが日本市場を再び重要拠点と位置づけている証左と言えるだろう。
【文:高須基一朗】

