ダゲスタン発、また一人の“無敗王者”衝撃スープレックスKOが示すUFC前夜

2026.2.18

2月中旬、中央アジアのケージで起きた一撃が、世界のMMAファンの視線を奪った。舞台はカザフスタンで開催された総合格闘技イベント「Naiza FC 81」。主役はロシア・ダゲスタン出身の無敗王者、ラマザン・ガサノフだ。


 

対戦相手はブラジルのベテラン、ウェメルソン・ヴィトール・フェルナンデス・リマ。実績十分の挑戦者を相手に、ガサノフは1ラウンド、試合の空気を一変させる。

テイクダウンからケージ際で主導権を握ると、相手が立ち上がろうとした刹那、腰を深く差し入れ、そのまま豪快に“ぶっこ抜いた”。高々と持ち上げられた身体は弧を描き、次の瞬間、マットへと叩きつけられる。衝撃は一瞬で意識を刈り取った。レフェリーが即座に試合を止める、文字通りの失神KOだった。

ダゲスタンという“勝者の再生産装置”

ガサノフはこれで14戦無敗。ウェルター級とミドル級の2階級制覇を達成し、勝利の大半をフィニッシュで飾っている。単なる“強豪”ではなく、決着能力に特化したファイターだ。

そして見逃せないのは、その出自である。ロシア南部ダゲスタンは、いまや世界のMMA地図を書き換えた地域として知られる。レスリングを基盤とする育成環境、幼少期からの競技文化、そして勝利を当然とするメンタリティ。かつてハビブ・ヌルマゴメドフが築いた成功モデルは、いまも再生産され続けている。

ガサノフのスタイルも、その系譜に連なる。圧力、組み、コントロール、そして一瞬の爆発力。打撃主体のMMAとは一線を画す、グラップリング主導の支配構造だ。

UFC待望論は“必然”

映像が拡散されると、SNSのコメント欄には「強すぎる」「相手がいない」「UFCで見たい」といった声が並んだ。最大の舞台であるUFCへの参戦待望論は、もはやテンプレートのように語られる。

だが、そこには単なる熱狂以上の意味がある。現在のUFCウェルター級は打撃型スターが主軸だが、組みで支配する無敗の新鋭が加われば、階級の力学は変わる可能性がある。市場としても、ロシア圏の視聴者は依然として大きなポテンシャルを持つ。

地方団体で無双する存在が、いかにしてグローバル舞台へと移行するか。MMAビジネスの観点でいえば、これは才能の問題だけでなく、契約、マネジメント、タイミングの問題でもある。

“無敗”は神話になれるか

無敗記録は、ファイターにとって最強のブランドだ。同時に、最大の試練でもある。数字が積み上がるほど、対戦相手の質は跳ね上がり、研究も進む。

今回のスープレックス失神KOは、ガサノフがローカル王者の枠を超えつつあることを示した。しかし本当の評価は、世界基準の競争環境でこそ問われる。