ONEで伝説を積み上げてきた兄弟たち「最強遺伝子」は伊達ではなかった―磯嶋祥蔵選手の顔面が血に染まった再起戦の現実

2026.2.14

【©️ONE Championship 】

2月14日(日本時間)、タイ・バンコクのルンピニースタジアムで開催された『ONE Fight Night 40』。ライト級MMAの一戦で、教員とプロ格闘家の“二足のわらじ”を履く磯嶋祥蔵選手(N★TRUST)が、エイドリアン・リー(シンガポール/米国)に1ラウンド2分56秒、TKO負けを喫した。

結果は明快だった。だが、その内容は単なる一敗では片付けられない。


 

▪️教壇とケージのあいだで

三重県伊賀市で教員として働きながらキャリアを積み上げてきた磯嶋選手は、国内団体GLADIATORで5戦全勝。日本ライト級の新鋭として昨年10月にONEへ参戦した。

デビュー戦ではニコラス・ヴィーニャをTKOで下し、順風満帆な船出を切る。

しかし、同年11月の日本大会で待ち受けていたのは、ONEグラップリング世界王者のタイ・ルオトロ。圧力と極めの強さの前に屈し、キャリア初黒星を喫した。

今回の一戦は、いわば真価を問われる再起戦だった。

 

▪️「血統」が象徴するもの

対するエイドリアン・リーは、いわゆる“最強遺伝子”の持ち主だ。

姉は元ONE女子アトム級王者のアンジェラ・リー、兄はONEライト級&ウェルター級の2階級王者クリスチャン・リー。家族そのものがONEの歴史を体現している。

だが、血統は保証ではない。昨年9月、エイドリアン自身もタイ・ルオトロに一本負けを喫し、初黒星を味わった。再起をかける立場は、磯嶋選手と同じだった。

 

▪️一瞬の光明、そして地獄

試合開始直後、エイドリアンが前進しパンチを振るう。

そこに磯嶋選手の右カウンターが炸裂。

エイドリアンの腰がわずかに落ちる。会場にどよめきが走った。

だが、次の展開が勝敗を分けた。

エイドリアンは打ち合いに固執せず、即座にダブルレッグでテイクダウン。

そこからは冷徹だった。

肩固めの体勢からヒジとパンチを落とし続け、額を切り裂く。血がマットに広がる。

マウントポジションを奪うと、容赦ないパウンドとヒジの連打。磯嶋選手は防戦一方となり、レフェリーが試合を止めた。

 

▪️課題は「選択の瞬間」

磯嶋選手にとってはONEでの2連敗。

だが敗因は単純な実力差だけではない。

カウンターで揺らした直後、距離を保ち追撃するのか、それとも組みを警戒してリセットするのか。MMAでは“次の一手”の選択が生死を分ける。

エイドリアンは迷わず組みに切り替え、磯嶋選手はそこを許した。

トップ戦線においては、1秒の判断がそのまま結果に直結する。

今回の試合は、そのわずか数秒のミスジャッジが冷酷なまでに結果を分けた。