五輪決勝で起きた“想定外” 銀メダリストが問う・・・大会運営のリスク管理

2026.2.14

【©️IOC】

ミラノ・コルティナ五輪オリンピック でスノーボード男子ハーフパイプ決勝で

銀メダルを獲得したスコッティ・ジェームズ(オーストラリア)が、

最終滑走中に発生した事故について静かに、しかし明確に疑問を投げかけた。


 

▪️逆転を狙った最終滑走での異変

予選を首位で通過し、決勝2本目終了時点で2位。

逆転優勝を狙える位置につけていたジェームズは、3本目のラストランにすべてを懸けた。

ところが、最後のトリックに入ろうとした瞬間、空中撮影用カメラのケーブルが突如切断。ワイヤーがコース上に落下し、演技の流れを遮った。

ジェームズは結果的に得点を伸ばせず、着地次に、最後のジャンプで尻餅をついて、落下し、げんてん。結果的に、順位は変わらないまま競技終了。

銀メダルという結果に甘んじることになった。

試合後、彼はこう語っている。

「ケーブルが切れたせいで滑走できなかった。再滑走はできるのか? 答えはノーだ」

言葉は短いが、その含意は重い。競技中の安全確保と公平性は、五輪という最高峰の舞台で最優先されるべき要素のはずだ。

 

▪️勝敗を分けたのは“技術”か“偶然”か

ハーフパイプは一瞬の集中力が命運を分ける競技だ。空中での高度、回転軸の精度、着地の安定性。そのすべてが数秒のうちに採点へと反映される。

だからこそ、外的要因が介在する余地は本来、限りなくゼロに近づけられるべきだ。

今回の事故が競技そのものにどの程度の影響を与えたのか。

採点基準に照らして再滑走が妥当だったのか。

IOC国際オリンピック競技委員会の公式の見解は慎重だが、少なくとも選手側の心理に影響を及ぼしたことは否定できない。

それでもジェームズは、感情を爆発させることはなかった。

「それでも満足している。五輪でメダルを獲得できたことは信じられないほど素晴らしいし、誇りに思う」

 

▪️アスリートの成熟が浮き彫りにした課題

抗議よりもまず、成果への感謝を口にする姿勢。

そこにはトップアスリートとしての成熟がにじむ。

一方で、その冷静さが逆に大会運営側の課題を浮き彫りにする。

五輪は、競技の純粋性を世界に示す舞台でもある。映像演出の高度化が進む一方で、安全対策と競技環境の整備は常に再検証されなければならない。

勝敗の差が、最後のラストランのワンヒットの成功の出来栄え次第では、覆った可能性もわずかではあっただけに、「もしも」は大きな意味を持つ。

銀メダルという結果は揺るがない。

だが、あの最終滑走が何事もなく完遂されていたら・・・。

その問いは、この大会の競技の記憶に残り続けるだろう。