引退を選んだ柔道 金メダリスト角田夏実さんが語った「次の人生」ONEからの非公式オファーについて・・・リアルな選択
「中途半端な気持ちで五輪は目指せない」。
パリ五輪柔道女子48キロ級金メダリストの角田夏実(33)が、第一線から退く決断を下した理由は、栄光の裏にある“迷い”と“現実”だった。
1月30日、千葉県内で行われた引退会見。柔道着姿で壇上に立った角田は、「引退」という言葉の定義そのものに葛藤しながらも、競技人生に自ら区切りをつけた。
▪️「まだ戦いたい」と思えた自分が、消えていった瞬間
引退を意識し始めたのは、昨年2月のグランドスラム・バクー大会だったという。
五輪金メダリストだけが着用できる“ゴールドゼッケン”で臨み、結果は優勝。しかし、心は不思議なほど高揚しなかった。
「勝っても、気持ちがついてこなかった。モチベーションが上がらない自分に気づいてしまった」
2028年ロサンゼルス五輪までの3年間を想像したとき、「どう戦っている自分も思い描けなかった」。
12月のグランドスラム東京大会にもエントリーせず、試合を見つめる側に回った瞬間、決定的な感情が芽生えたという。
「“すごいな”“苦しかったよな”と思ってしまった。もう、あの舞台に立ちたいとは思えなかった」
▪️ONEからの打診 それでも総合格闘技への転向を選ばなかった理由
会見では、引退後の進路にも注目が集まった。
角田は、アジア最大級の格闘技団体「ONE Championship」から非公式のオファーがあったことを明かした。
柔道の実績、世界的な知名度、そしてバラエティ番組で見せる親しみやすさ。
総合格闘技転向は、話題性の面では申し分ない。
しかし角田は、その選択を冷静に退けた。
「面白そうだとは思いました。でも、簡単なことじゃない。現実的に考えて難しい」
“できそうだからやる”のではなく、“覚悟を持てるかどうか”。
五輪を目指せなくなった理由と同じ基準で、彼女は次の挑戦も見極めていた。
▪️柔道普及と、もう一つのテーマ「結婚と出産」
今後の活動の軸として掲げたのは、柔道の普及だ。
全国を回る柔道キャラバン、国内外での道場開設など、「競技者ではない形」で柔道と向き合っていく。
そして、もう一つ。
会見で語られた言葉が、多くの共感を集めた。
「結婚したい。30代女性として、妊娠や出産とどう向き合うか、その悩みを発信していきたい」
トップアスリートでありながら、あえて“普通の30代女性”の悩みを口にした。
これは、競技人生を終えたからこそできる、もう一つの挑戦とも言える。
角田選手は決してエリート街道を歩んできた選手ではない。
大学時代まで無名に近く、階級変更や五輪落選を経て、31歳でようやく世界の頂点に立った。
「柔道センスがあるとは思っていなかった。負けず嫌いで、支えてくれる人たちの期待に応えたかった」
だからこそ、中途半端な形で競技を続ける選択はできなかった。
第一線から退く決断もまた、彼女なりの“勝負”だったのだろう。
金メダルの先にあったのは、次の肩書きではなく、どう生きるかを選ぶ自由だった。今、柔道家としてではなく、一人の女性として、新しい岐路に立とうとしている。

