名作映画「レスラー」で甦った元スターも例外ではない!! ミッキー・ローク、家賃滞納で立ち退き危機―ハリウッド俳優を追い詰める“アメリカの現実”
2008年公開の映画「レスラー」で劇的なカムバックを果たし、アカデミー賞主演男優賞にノミネートされた名優ミッキー・ローク(72)が、ロサンゼルスの自宅から立ち退きを迫られる危機に直面している。1980年代にハリウッドを席巻した元スターの窮状は、決して“特別な転落劇”ではなく、現在のアメリカ社会が抱える構造的問題を映し出す象徴的な事例とも言える。
米国の芸能誌などの報道によると、ローク氏は2025年12月、約6万ドル(約940万円)に及ぶ家賃滞納を理由に立ち退き通知を受けた。これを受け、今年1月5日にはクラウドファンディングサイト「GoFundMe」を通じて支援を要請。目標額は10万ドル(約1570万円)で、現時点では約1万ドル(約155万円)が集まっている。
支援ページには、ローク本人の置かれた状況を端的に表す言葉が並ぶ。
「名声は困難から守ってくれない。才能は安定を保証しない。残されたのは、尊厳と住まい、そして再起のチャンスを得るべき一人の人間だ」
ページでは、俳優業を離れてプロボクサーに転向した後、肉体的・精神的に深刻なダメージを負ったことや、「かつて称賛した業界から見捨てられた」と感じている心境も明かされている。
ローク氏は1980年代、フランシス・フォード・コッポラ監督の「ランブルフィッシュ」で注目を集め、「ナインハーフ」「エンゼル・ハート」「バーフライ」などで危険な色気をまとったスターとして一時代を築いた。
しかし90年代にプロボクシングへ転向したことを機にキャリアは停滞。
顔面に重傷を負い、長い低迷期に入った。
その人生と重なる役柄で再評価を受けたのが、ダーレン・アロノフスキー監督の「レスラー」だった。落ちぶれた中年プロレスラーを演じたロークは、ベネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞し、アカデミー賞主演男優賞にもノミネート。奇跡的な復活劇として語り継がれている。その後は「アイアンマン2」でマーベル作品にも出演し、再び第一線に返り咲いたかに見えた。
だが、近年は目立った出演作が減少。
予定されていたインディペンデント映画「マスコッツ(原題)」も、共演者ウド・キアが2025年11月に死去したことで製作の先行きは不透明となっている。
ローク氏の苦境の背景には、個人の問題だけではなく、アメリカ社会全体の変化がある。近年の急激なインフレにより、ロサンゼルスをはじめとする大都市圏では家賃が高騰。中流層でさえ住居の維持が難しくなっている。さらに、俳優業は作品単位の契約が基本で、安定した収入や医療保険が保証されにくい職業だ。2023年以降続いた脚本家組合(WGA)や俳優組合(SAG-AFTRA)のストライキは、特に中堅・ベテラン俳優の生活を直撃した。
日本では「ハリウッド俳優=富裕層」というイメージが根強いが、実際には一部のトップスターを除き、多くの俳優は不安定な収入と高額な生活費にさらされている。名声を得た過去があっても、仕事が途切れれば生活は一気に行き詰まる。それが現在のアメリカの現実だ。
「レスラー」で描かれた再起の物語は、スクリーンの中だけの寓話ではなかった。
ミッキー・ロークの立ち退き危機は、成功と転落が紙一重であるハリウッド、そして“自己責任”を前提としたアメリカ社会の厳しさを、改めて浮き彫りにしている。

