井上尚弥選手、6年ぶりの判定勝利で5度目の4団体防衛 技巧光るテクニックは、来年ゴルデンウィークを見据えた未来のため

2025.9.15

【井上尚弥選手・公式インスタグラムより画像】

ボクシング世界スーパーバンタム級4団体統一王者の井上尚弥(大橋)が14日、名古屋市・IGアリーナでWBA暫定王者ムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)を3-0の判定で下した。これで世界戦は26連勝となり、史上最多となる5度目の4団体同時防衛を達成。偉業を重ねた一戦となったが、6年ぶりの判定決着に会場や海外メディアからは賛否の声が上がっている。

 

▪️主導権を握った技巧戦

試合は序盤から井上がジャブとボディショットでリズムをつかみ、着実にポイントを積み重ねた。中盤以降はフットワークを駆使し、相手との距離を完全にコントロール。的確なパンチを当て続け、アフマダリエフを寄せ付けなかった。
ただ、これまでのような強烈な一撃で試合を終わらせるシーンはなく、KO決着を期待していたファンにとっては物足りなさが残った。

 

▪️海外メディアの評価は分かれる

英BBCは「井上の完全支配」と称賛する一方で、「爆発的なKOを望んだ観客にはやや落胆もあった」と報道。米専門誌『ザ・リング』は「技巧の美しさを再証明したが、KOアーティストとしての姿を見たかった」とやや辛口の評価を下した。
一方、対戦相手アフマダリエフについては「スピードもパワーも不足していた」と厳しい声が多いが、「井上のKOを封じた」という点に一定の評価を与える見方もある。

 

▪️今後を見据えた戦い

この日のセミファイナルでは、同門の武居由樹選手が世界タイトルマッチの防衛戦でまさかのTKO負けを喫した。直後に登場した井上尚弥選手は、後輩の前で負けるわけにはいかない立場を大きくした。そんな中で選択肢として、“倒すボクシング”だけでなく、冷静に試合を組み立てて勝ち切る姿勢を示したと言えるだろう。

将来を見据えた戦い方とも言え、無敗街道を走り続けるための選択でもあった。
井上は次戦を12月に予定しており、その後には来年ゴールデンウイークでの中谷潤人戦が見込まれる。

日本人頂上決戦の大舞台を控える中、大きな怪我を避け、戦術の幅を広げるという意味でも今回の勝利は重要なステップとなった。