ボクサー那須川天心選手が格闘技界の未来へ提言「安全と品格の両立」を呼びかける

2025.8.23

【那須川天心選手/公式インスタグラムより画像】

ボクシング界で相次ぐ死亡事故に揺れる中、世界バンタム級1位の那須川天心選手(27=帝拳)が、新たなリーダーシップを示した。

地元・千葉県松戸市で行われたイベント「天心祭」の会場でマスコミを相手に取材に応じた那須川選手は、リング禍の多発に触れ「事故は他人事ではない。

だからこそ、選手も関係者も一丸となって、覚悟と責任を持って臨むべきだ」と語気を強めた。

 

今月初めには、国内興行に出場した選手2人が、同じ日の試合で急性硬膜下血腫で、病院を搬送され、その後、命を落とすという痛ましい出来事があった。

日本プロボクシング協会も、過去2年半で6件の開頭手術に至る事故が発生していると明らかにしている。安全対策の徹底は待ったなしの課題だ。

そんな状況下に、那須川選手は単に「危険を覚悟するべき」と言うだけではなく、競技全体の在り方を問い直した。

「ボクシングだけでなく、格闘技全般で“どうあるべきか”を選手たちが率直に話し合うべき時期。下品な煽りや対立の演出ではなく、ファンや社会に対して誇れるスポーツであることを見つめ直さなければならない」と強調。

さらに「JBCや団体だけで閉じた議論をするのではなく、スター選手たち自身が前に出て会議を開けば、多くの人に伝わる。説得力があるし、ファンも安心できるはず」と“格闘技界横断の会議”を提案した。これは単なる批判や悲観ではなく、未来を見据えた実務的な提言と言える。

那須川選手はキック、総合、ボクシングと幅広い舞台を経験してきた稀有な存在。

その歩みを踏まえ「格闘技は誰もが簡単に触れられるものではない。

だからこそ、表に立つ選手が『本当の格闘技の姿』を示す責任がある」との考えを示した。名前こそ挙げなかったが、同世代の人気選手・朝倉未来選手らを含めた対話の場を想定している。

一方で、自らが主催する「天心祭」は予定通り開催。「負のニュースが多い時代だからこそ、仲間や家族と体を動かし、笑い合える時間を届けたい」と地元への思いを語った。所属ジムで悲しい出来事があった直後でありながらも、赤字覚悟で実施を決断。ファンの前に立つ姿勢が、彼の言葉に重みを与えている。

リング上では挑戦者であり続ける那須川選手だが、今回の発言からは“次世代を守る担い手”としての覚悟がにじむ。

事故の連鎖を断ち切り、格闘技を「夢と誇りの舞台」として次の世代に残すための発言は素晴らしい。