RIZIN▶︎ダゲスタン戦士ガジャマトフ、アウェイで示した決意“70時間の孤独な旅路”が物語る格闘家の覚悟

2025.8.20

格闘技イベント「RIZIN」は19日、都内でフライ級グランプリ総選挙を開催。準決勝進出者4人と対戦カードが決定した中、ひときわ異彩を放ったのがダゲスタン出身のアリベク・ガジャマトフ(24)だ。

 

祖国を離れ、言葉も文化も違う異国の地・日本。

RIZINフライ級グランプリ準決勝へ駒を進める重要なイベントである

総選挙の投票のためだけに、彼はたった一人で“往復70時間”に及ぶ過酷な移動を敢行した。

飛行機を乗り継ぎ、長い待機時間を耐え抜き、時差と減量の苦しみに身を削りながらも―それでもガジャマトフは日本にやって来た。

目的はただひとつ、「人生を変える」ためである。

1回戦で征矢貴選手を鮮烈なKOで下した実力は折り紙付き。

しかし知名度の低さから、投票での敗退を懸念する声も少なくなかった。

そんな中、彼は約5分間のスピーチに全身全霊を込めた。

「私の生まれた村には人生の選択肢がない。だからこそ、このチャンスを勝ち取らなければならない」

震える声で、それでも力強く語ったガジャマトフ。

異国の地で不利を背負いながら、観客やファンに自らの存在を必死に訴えた姿には、格闘技を超えた人間のドラマがあった。

総選挙で当選が告げられた瞬間、彼の顔には子どものような笑みが広がった。

その喜びは、ただ次の試合を得たというだけではない。母国の仲間たちに希望を示し、自らの未来を切り開く道を手にした証だった。

 

次なる相手は、優勝候補にして日本格闘界のベテラン・扇久保博正選手。経験も実績も段違いの強敵に挑むのは、決して容易なことではない。

しかし、異国の地で孤独を背負い、すべてを懸けてここまで来たガジャマトフにとって、その困難こそが戦う理由である。

70時間の旅路も、過酷な減量も、異国で味わう不安も、彼にとっては「人生を変えるための代償」にすぎない。

今回の総選挙での心を打つスピーチによって、日本での彼の人気が上がったことは明確だ。

【文:高須基一朗】