“鬼滅スクリーン占有率”の波紋!!『スーパーマン』も『国宝』も枠不足―多様な作品が埋もれる映画館のいま

2025.7.16

【©️アニプレックス】

今週末金曜日、全国の映画館に異変が起きている。

7月18日に公開される『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第1章 猗窩座再来』が、TOHOシネマズをはじめとする多くのシネコンで、1日30~40回という異例の上映体制を敷いているからだ。

 

かつて『無限列車編』で国内興行収入400億円超という歴史的記録を打ち立てた「鬼滅」シリーズ。その続編とあって、シネコン各社も最大限の興収を見込むべく、まさに“鬼滅一色”とも言えるスケジュールを編成している。

しかし・・・その陰で静かにスクリーンを追われている作品があることも、忘れてはならない。

たとえば、ハリウッド大作『スーパーマン』や、日本の美と文化を映像美で描いた『国宝』。さらには親子層向けのエンターテインメント映画『逃走中 THE MOVIE』なども、決して小粒ではない作品群だ。それでも上映回数や上映館は激減し、劇場によっては深夜枠や“週末1日1回”に追いやられる状況となっている。

とりわけ顕著なのが、大型劇場スペックの入れ替えだ。Dolby Atmos、MX4D、IMAXなどの音響・体感演出に優れたプレミアムスクリーンも、木曜日まで上映されていた作品を押しのけ、金曜日以降は『鬼滅の刃』に完全入れ替え――実質“独占”の状態となっている。

「鬼滅だから仕方がない」
「売れる作品に集中するのは当然」

そんな声が聞こえてくるのも事実だ。

しかし、この“話題作一強”構造が恒常化し、他の映画が上映機会すら与えられない状況が続くのであれば、それは果たして健全な映画興行のあり方といえるのだろうか。

もちろん、興行をビジネスと捉える以上、限られたスクリーンを動員力の高い作品に充てるのは理にかなっている。だが同時に、異なるジャンル、テーマ、視点をもった多様な作品が、ただタイミングが悪かったという理由だけで“埋もれていく”現実も看過できない。

映画館は、ヒット作を映すだけの場ではない。文化的な出会いを生み出し、観客の視野を広げる“交差点”でもある。

とりわけTOHOシネマズのような全国規模のシネコンチェーンには、興行収入の最大化と同時に、映画文化の多様性を担保する責任も求められているのではないか。

「観たい映画が、どこでもやっていない」
そんな声が観客の間で確実に増えている。
それは単なるビジネス上の選択の結果ではなく、映画文化の土壌そのものが痩せ細っている兆候なのかもしれない。

超ヒット作を支えつつも、挑戦的で多様な作品に光を当てる仕組みを、私たちは見失っていないだろうか。
スクリーンの未来をどう切り拓くのか。

いま、映画館に求められているのは、その問いに向き合う姿勢なのではないか。

【文:高須基一朗】