フジテレビ「ホスト題材ドラマ」に異例の注意喚起 風営法違反の可能性を明示 “枕営業”巡る論争にも波及
【© Fuji Television】
木村文乃さんとSnow Manのラウールさんが共演するフジテレビ系木曜劇場『愛の、がっこう。』(毎週木曜・午後10時)の初回が7月10日に放送され、番組終了後に表示された“法令違反の可能性を含む注意喚起”が波紋を広げている。6月28日に施行された改正風営法への配慮とみられるが、作中で描かれたホストクラブの演出に対して「枕営業を想起させる」との指摘も一部視聴者の間で広がっており、ネット上では議論が加熱している。
▪️禁断の恋と違法性の狭間
ドラマは、真面目な高校教師・小川愛実(木村)と、文字の読み書きが困難なホスト・カヲル(ラウール)との“秘密の個人授業”を通じて芽生える恋を描くラブストーリー。
学歴や職業、社会的立場の格差を越えて惹かれ合う二人の姿が描かれる一方で、第1話からホストクラブでの接客や親密なやりとりがリアルに再現され、演出の過激さが注目を集めた。
ところが放送終了後、フジテレビは異例のテロップを表示。
改正風営法の施行を踏まえ、「このドラマのホストクラブにおける一部表現には、違反となりうる営業行為が含まれています」とし、番組公式サイトで法令解説を掲載していることを案内した。視聴者に対し、「悪質なホストクラブで被害にあわないよう、十分ご注意ください」とも呼びかけた。
▪️“枕営業”描写をめぐる波紋
さらに物議を醸しているのが、作中で描かれた男女の距離の近さや“個人授業”の演出が、「いわゆる枕営業を想起させるのではないか」という声だ。
SNS上では「ホストと女性客の関係性がリアルすぎる」「個人授業という名の恋愛接客なのでは」「現実にこういう営業が横行している」といった懸念の声が相次いだ。特に、ホストクラブ業界の一部でささやかれる“枕営業”―顧客との性的関係を通じて売り上げを上げる行為について、黙認されてきた実態がある中、フィクションとはいえ
それを美化するような演出に警鐘を鳴らす声も少なくない。
実際、改正風営法では、過剰な接客や不適切な同伴行為、営業時間外の接触などが新たに規制対象とされ、当局による取り締まりが強化されている。こうした背景のなかで、テレビドラマがどこまで現実の水準を描き、また逸脱すべきでないのかが改めて問われている。
▪️制作側の「自由」と「責任」
ホスト業界や接客業界を題材にしたフィクションはこれまでも存在してきたが、近年の風営法改正や社会の目の厳しさを踏まえると、制作者にはより慎重な配慮が求められる。
今回のフジテレビの対応は、表現の自由を確保しつつ、放送による誤解や法的トラブルの回避を図る狙いがあるとみられる。だが、その一方で、「描写の責任を視聴者に転嫁しているのではないか」との批判もある。
“恋愛ドラマ”としての自由な表現と、ホスト業界が抱えるグレーゾーンの現実。
その狭間で揺れる今回の作品は、エンタメと社会規範の接点における新たな課題を浮き彫りにしている。
【文:高須基一朗】